「普通」なんて、現実には存在しないのかもしれない。

どこが面白いか説明しづらい小説は、本当に面白いのだと思う。それは、例えばこの小説。

新興宗教に深く関わっていた子供時代と、宗教から離れてごく普通の社会人として現代に生きる、俺。日常の横にある不穏さ、というか、そもそも「日常」なんて無いんじゃなかろうか、と思わせる、物語の迫力。

現実は小説のようにうまくいかないんだよ――という言葉にカウンターパンチをくらわすような小説です。うまくいかない、普通に生きる、でもそれってたぶん普通じゃない。そんな物語です。