いきなりレビューという行為自体を放棄するような書き出しではじめてしまいますが、作品内容に関しては、ここで四の五の解説するよりとにかく一読してもらった方がいいと思います。
8000字弱の作品ですし、大した時間は掛かりませんから。
それで、ごく個人的な感想になってしまうんですが、私も学生時代にはいわゆるオタク系のサークルに所属していた経験がありまして。
サークル内のメンバーにも「消費型」と「創作型」の人間が居て、後者は少数派だ~みたいなくだりには、何やら当時を思い出して、そういうのってよくあるよなーと、スッゲー懐かしい気分になったりました。
ああ、遠い日の麗しい思い出ってやつですね。
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……まあ、もっとも私が所属していたサークルは、女の子の部員なんか全然居なくて、いっつも汗臭い男ばっかでガンダムの一年戦争について朝まで語り合ったりする場所だったんですけどね!!(白目)
四月一日をテーマにした、一貫性のある恋愛叙事詩です。大学のアニメ研究会を舞台にした、サークル内恋愛のあれやこれ。
ヒロインの苗字が四月一日(わたぬき)、という所から発想したのでしょうか。センテンスごとに日にちを設け、時系列順に読ませることを意識した文章が非常に巧みでした。
一途に一人の女性を想い続ける主人公の心境も、ストレートでありつつオタクらしい忸怩たるジレンマに悩まされていて、共感できる人は多いはず。
サークル活動を経て徐々に距離を詰めて行く恋愛模様も、堂に入ったものです。この分量でよくぞ一年間の軌跡を書き切ってくれました。
結ばれるけど、結ばれない、痛切な想いを告白する最後の一文をぜひ、多くの方にも体験して欲しいです。
定番だけど、だからこそ胸を打つ王道が待っています。