「一人を消去しても罰せられない」という異常なシステムが導入された近未来が舞台ですが、ここで描かれているのは、生死の意味と心の弱さという永遠のテーマだと思いました。(以下、少しネタばれ)普段からシステムに異を唱えていた主人公が、いざ当事者になると態度が変わり、その後、ある事件を経て後悔する姿がリアルだと感じました。
現実って案外こんなもんだよな、と感じさせられる作品でした。必死で足掻く主人公がとにかくやるせない……。
非常に面白い問題提起の作品なのだが、そもそも「どんな問題提起」なのか自体さえ、考えさせられる。私の読解力程度では、テーマ性とそれに対する作者の考えが、明確に示されているわけではないと判断せざるを得なかった。それだけに、読んだ者がどんなことを考えるのか、それ自体がテーマであるような作品だ。