第3話 ニートが職業安定所なのです!

「え、ちょっと待って!同い年!?」


そう、ナルスが驚くのも無理はない。


魔女コスプレをしているといったが、魔女風の帽子とマント。ここからが問題だ。


そのマントの下にはなんと、私立ピースグレイト学園高校という超有名高校の制服を着ていたのだ。


ナルスは、あんぐりと開いた口から、


「え、え、えじゃあ、なんでその年でその制服を着てるの?」


「はい!3年も着た制服だとなんだが着慣れてしまって部屋着にしてたんですけどぉ、そのうち私服にもなってしまって。えへへ!」


「えへへじゃないよ!その制服着てたら勘違いされるよ!!」


「まあいいのです!!」


「良くない!!」


………


そんな話が続いてひと段落して、二人はこれからどうするか話し合った。


「ところでさ、えーとミ、ミ、ミ…」


「ミルナなのです。」


(そうだった。あまりの衝撃で忘れてた……)


「ミルナは何が得意なの?魔法とか?(見た目から)」


「はい!そうなのです!大体の中級魔法ならいけますよ!ちなみにブレイブはどうなのですか?」


「えーーとねー、うーーんとねー、」


ナルスが困り果てたその時、わきに短剣をさしていたのを思い出し、


「剣士…かな……」


「ブレイブさん。ないんならないって言っていいんですよ。」


「ばれたかー。」


「いま気になったのですけど、ブレイブの本名ってどんなお名前なのですか?」


「え?ブレイブだよ。ナルス・ブレイブ」


「っぷ、ぷははっははっははは!ニートがブレイブ《勇敢》だなんて。っはは!」


「ニートで悪かったな!!」


「じゃ、行きますか。ブ…ブレ…ぷはっ!」


「もういいわ!!もう、ナルスでいいよ」


「そういえばナルスのリアルのレベ……」


「あーー!!!」


ナルスは一つ忘れていたことがあった。それは、



――― あの時 ―――



……マース王国はアース・ドレイクンを打倒するため、勇者を募っているそうです。詳細は………」


俺は、期待の視線を感じつつ、回しざるおえない首を母親のほうに顔を向けた。


「言ったよね~。勇者になるって……



――― 現在 ―――



「はっ!!勇者になるって言ったけど詳細聞いてなかった!」


ナルスは膝から崩れ落ち…た。


トンットンッ


ミルナが慰める?ように肩を叩いた。


「スマフで調べればいいのです。」


「あ、そっか。」


ナルスは一つわかったことがある。自分って案外立ち直りが早い。


「えーと、〔マース王国 勇者 募集〕っと。」


「あ、でましたよ。ナルス!」


「…ん?なになに?勇者を志望するものは、職業安定所にて所定の用紙と面接を受けてもらいます。か。職業安定所って聞いただけで不安感が…」


「では行くのです!ナルス!」


「はぁ、そうだな!」



――― 職業安定所に移動中 ―――



「そういえば、本当にナルスは得意なことは無いのですか?」


「一つ上げるとすれば、ネトゲ?」


「ネトゲはリアルの戦闘で使えないのです。」


そういわれると思い、ナルスは唯一の自慢であることを自信満々に答えた。


「それじゃあ、反復横とびかな」


「さっきも言いましたが、戦闘では使えないのですよ。」


ミルナの目線が少し冷ややかな感じがしたがナルスはめげずに、さらに意気揚々と、


「ただの反復横とびじゃないからな!小学校の頃、それでつむじ風起こしたんだからな!」


ミルナはあまりの気迫っぷりに噴き出してしまった。


「ぷははっ!冗談は名前だけにしてほしいのです!」


「本当だからな!!」


ナルスはなんとなく安心をした。


そんなことを話しているうちに、職業安定所に到着した。


「さあ、入るか!」


「はい!ナルス!」



――― 職業安定所内に移動中 ―――



「へぇ、中って案外広いんだな~。」


今までニートだけあって、職業安定所には一度も行くことがなかった。就活みたいだ。


ナルスがそんな風に思いふけっていると、ミルナが勇者の募集を見つけてナルスの裾を引っ張り、


「ここです!ここなのです!」


「あ、あった。」


そこは、受付の端に作られたちっぽけなところだった。


「意外に小さい……」


「あの!すみません!」


「おいおい、先に行くなよミルナ!」


勇者の受付に座っていたのは、なんともおとぼけたおじいさんだった。


そのことにとやかく構わず、ミルナは迫真の勢いで、


「あの!勇者になりたいのです!!」


「……ん?ああぁ、勇者受付じゃな。ずいぶん勢いの良い勇者候補さんが来てくれたもんだ。」


ナルスはこの話の流れよりも、そのおじいさんが寝ていたことに少し引き気味であった。


「あ、あの、勇者になりたいんですけど。」


ナルスが改めて伝えると、


「ああぁ、後ろにある用紙に必要要項を書いて渡してくれんかのぅ」


「「はい……」」


なんともあっさりした返答で、2人が出会って初めて息がそろった時でもあった。


その後、受付のおじいさんに言われた通り、用紙を書きに行った。


「必要要項は、名前と年齢とレベルと前の職歴かぁ。まあ、とりあえず正直にと……」


ナルスが書いていると先にミルナが書き終わった様子で、あることを質問してきた。


「このチームの名前のところなのですけど、ナルスの名前でよいのですか?」


「うん。そうだね。」


「ナルスの名前。フルネーム……ブ、ブレイブッッ、ぷははは!」


「もういいわ!!」


「では、お先に受付してもらうのです!!」


「ガンバー」


一番最初に受付したのはミルナ。


「ミ、ミルナ・プレンです!!お願いしますなのです!!」


「ミルナさんね。えぇーと、得意な攻撃方法が魔法ねぇ。しかも、レベルが58ときた。これはいいんじゃないかねぇ。仕事も洋服の裁縫士とは立派なものだ。」


ミルナはおじいさんのほうをじっと見つめながら、固唾かたずをのんでいた。


「ど、どうなのですか?」


「まぁぁ、勇者にはぴったりだからね。一様選考にかけさせてもらうよ。」


「せんこう?」


「聞いてなかったのかね。募集定員は2名なんじゃよ。」


「え?!」


「まぁ、受かるかどうかは時の運じゃがね。」


ミルナが肩を落とし始めとは全く逆のテンションで受付から戻ってきた。


ナルスは戸惑いながらも慰めのつもりで、


「大丈夫か~?」


と、聞いたが、帰ってきた返事は、


「ナルスさん。落ちても落ち込まないでくださいね。」


ナルスはあまりよく意味がわからなかったが、ミルナに続いて受付に行った。


「えーとぉ、次はナルス・ブレイブさんね。」


この小さい区間にとてつもない緊張感が流れている。


「前の職歴がフリーターね。」


「は、はい…。」


完全に終わったと思った瞬間、今まで落ち着きを持っていたおじいさんが

、聞いたことのない声で驚いた。


「ふぁあああああああえぇぇぇぇ!!!!」


すると、職業安定所内の視線がすべてこっちに向いた。ミルナも暗い顔をしながらこっちを向いたが、何かをやらかしたような視線を向けている。


「うっ!」


心が痛い。だが、それを反するようにあの驚いた受付のおじいさんが、


「是非、勇者になってくれんかのぅ!!」


「ど、どうしてですか!?」


「……おぬしのレベルじゃよ。」


そう言いながら、おとぼけたおじいさんが笑みを浮かべた………。




第4話に続く……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ニート勇者はすでにLv99なのです! すずのき @daiking

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ