下校
せっかく香織に手伝ってもらったのに、邪魔された。あんな、いいタイミングで乱入してくるなんて、先生こそがテロリストじゃないか!
いや、それはどうでもいい。それよりも、新たな課題が出てきた。手を挙げたら、何もできない。武器も持てない。これではダメだ。服に何か暗器を仕込むか?出来れば、飛び道具。でも、夏だから半袖だし、仕込む場所がない。困った。いや、違う!その前に仕留めればいいんだ!だったら、強力な飛び道具が必要。銃って、どこで手に入るんだろう?
「……くん、いっくん!」
隣で香織が俺を呼んでいる。でも、今はそれどころじゃない。テロリストに対抗する手段を……。
「いっくん、聞いてるの!?」
あ、香織、本気で怒ってる?横を見ると、頬を膨らませて俺を睨み付けてる香織がいた。
「ご、ごめん。き、聞いてるよ?」
「じゃぁ、あたしが何言ってたか言ってよ!」
「え?えぇと、それは、その……」
「やっぱり、聞いてない」
「あ、あの、ごめん。で、何?」
「うん、だから、テロリストなんて本当に来るって思ってるの?」
「思ってるよ!いつか、絶対に来る!」
俺はそう信じている。だから、普段から来たときのために準備をしてる。
香織は俺の返事を聞くと、前に出て振り返り、立ち止まった。それにつられて、俺も足を止める。
「じゃぁさ、本当に来たら、あたしのこと、守ってくれる?」
少しうつむいて、だから、自然と上目遣いになって香織が聞いてきた。その表情や、仕草が可愛く思えた。顔が熱くなってくるのを感じで、でも、そんなことを知られたくなくて、だから、横を向いて俺は答えた。
「そのときは、その、香織のことは守ってみせるよ」
「ありがと」
横目で見ると、満面の笑みだった。
何だ、これ?心臓がマラソン走ったときみたいにドキドキしてる。走ってないのに何で?
──────────────────────────────
テロリストが来たら、なんていっくんは言ってるけど、あたしの心をいつも乱す、いっくんこそがあたしにとっては本当のテロリストだよ。そう、それは──
恋のテロリスト。
テロリストはこのクラスに 星成和貴 @Hoshinari
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