香織

 うん、何でこんなことになったのかな?

 幼馴染みのいっくんを見ると何だかそわそわしてる。普段から、学校にテロリストが来たら、とか考えてるから、今の状況、楽しんじゃってるんだよね?じゃぁ、あたしもいっくんのために頑張らないと、ね。


「大人しくしろ」


 水鉄砲を持って、テロリストが言いそうなことを言ってみた。いっくんが小さく頷くのが見えた。うん、これで合ってるんだ。

 であたしはテロリストの真似事をすることになった。

『放課後、教室に残っててくれ』

 っていっくんが言ったとき、ちょっと期待して、ドキドキしながら一日過ごしてたんだけど、こんなことをするなんて予想外だよ。

『イメージトレーニングは十分した。だけど、本番の前に実演も必要だと俺は思う。だから、香織、テロリストになってくれ』

 なんて言われたから、驚いちゃったけど、うん、つまりは、テロリストごっこ、ってことでいいんだよね?

 でも、このあと、あたしはどうしたらいいの?テロリストとか分かんないんだけど?

 助けを求めるようにいっくんを見ると、机に手を入れて何かごそごそとしてる。そして、あたしの方を見て目で何かを訴えてきてる。手の動きが激しくなったのか、机がガタガタ言い始めた。


「えぇと、おい、お前、動くな?」


 これでいいのかな?いっくんはまた小さく頷いた。じゃぁ、次はこれかな?


「ゆっくりと手を挙げろ」


 水鉄砲を構えつつ、近付いていった。いっくんはゆっくりと手を挙げ、立ち上がった。

 あたしは水鉄砲をいっくんの胸に向ける。もし、このまま撃っちゃったらいっくん、どんな反応するのかな?試してみようかな、なんて思ったら、教室の扉が開かれた。あ、担任の福田先生だ。


「いつまで遊んでいるんだ?」


「ごめんなさい。すぐ帰ります」

 いっくんは少し不満そうだったけど、本当ならもう帰る時間だし、これで終わりでいいよね?あたしは自分の席に戻って、ランドセルを背負った。

「いっくんも早くして」

「う、うん」

 まだ続きをやりたい感じで、ぐずぐずと帰る準備をしてるいっくんをあたしも手伝った。だって、このままだったら先生、本当に怒り出しそうなんだもん。

「先生、さようなら」

 何とかランドセルを背負わせて、先生に言うと、

「あぁ、その、もう四年生なんだから、もう少し落ち着いてくれると先生は嬉しいよ」

 苦笑いしながら先生はそう言った。

「分かりました。いっくんに後でしっかり言っておきます」

「おう、頼むな。それじゃ、また明日。さようなら」

「はい、さようなら。ほら、いっくんも」

「……さようなら」


 あたしたちはいつもより少し遅い時間に二人で帰っていった。

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