第七話 魔物襲来 Ⅰ
朝早く、銀色の金属製ドアノブが付いた木製のドア……冒険者ギルドのドアを開ける。
そして受付嬢アイナの所に行く。
「おはようございます。今日はどのようなご用ですか?」
「彼女……俺の奴隷のマイラの冒険者登録に来た。」
「えっ!もう買ったんですか?」
アイナが大声で叫ぶとギルド内の視線が集中する。
「こほん。失礼いたしました。マイラさんでしたっけ?ダークエルフ何ですか?珍しいですね。」
仕入れ先は海を挟んでいるのだ当然高くなる。
「それで、冒険者登録は出来るのか?」
「はい、勿論です。」
アイナは書類に色々と記入した後、一枚のカードを取り出す。
「冒険者カードです。どうぞ。」
ランク:N
名前:マイラ
クラス:戦士
武器:槍、曲刀
特技:獣流槍術番級
獣流曲刀術夫級
気功術
炎魔法術番級
風魔法術夫級
雷魔法術夫級
「何かいい依頼はないか?」
「確か……はい!コボルトの巣の討伐依頼ですね。」
アイナが取り出したのはKランク
コボルトはNランクモンスター。ゴブリン並みの強さだが嗅覚に優れる。
また駆けるスピードはゴブリンよりも速く下級冒険者からは《斥候殺し》と恐れられる。
「巣の規模は?」
「あまり大きくありません。普通のコボルトの巣ですね。」
「分かった。依頼を請けよう。」
レオは依頼を請けるとマイラを伴い、冒険者ギルドを出た。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「此処か……。」
アラルス北部にある森林帯にある、コボルトの巣に来ていた。
「コボルトって穴を掘って巣にするんですね。」
マイラが巣を見ながらぽつりと呟く。……そう、コボルトは『此処掘れわんわん』とばかりに穴を掘って巣にするのだ。
「準備はいいか?」
今回はマイラを前衛に俺は魔法術で戦う。
「レオ様の杖は凄いですね。」
これか……。公爵が息子に与えるとしても価値の高いものだ。魔法術を幼稚園に入っているような年齢の時に使い出したのだから公爵の喜びも大きかったんだろう。これ以外にも、単属性の予備の杖を持っている。
《七虹隙瘉の杖》。赤いFランクモンスター《レッドオーガ》の魔石。青いFランクモンスター《甲鱗鮫》の魔石。緑色のFランクモンスター《エメラルドハウンド》の魔石。黄色のEランクモンスター《デミドラゴワーム》の魔石。紫色の《エレクトリックタイガー》の魔石。水色のFランクモンスター《ブルーオーガ》の魔石。白いEランクモンスター《シルバーデビル》の魔石。黒いEランクモンスター《アンデットプリースト》の魔石。桃色のFランクモンスター《ドレイントレイン》の魔石。合計9個の魔石と竜金によってできた杖だ。
「じゃあ取り敢えず……。」
杖を構え……
「ブレイズ・バースト」
洞窟に炎を叩き込み……
「マッド・ブリザード」
更に荒れ狂う吹雪を追加でお見舞いする。
「凄いですね……。詠唱無しですか。」
「詠唱なくても魔法術は使えるぞ?」
「そうなんですか?」
「ああ……。魔法術ってのは本来、魔法術式に魔力を注ぎ込むだけだからな。詠唱は魔法術のイメージを固めるだけだ。」
「なるほど。同じ魔法術を繰り返し使うと無詠唱で射てるように成るのはその為なのですね。」
「キャンキャン!」
「キャン!」
「コボルトが出てきたぞ。」
「はい!」
マイラは槍を片手に洞窟内に突入する。
洞窟の奥から光が迸り金属と金属がぶつかり合う音がする。
「さて……。いくか。」
レオは《七虹瘉隙の杖》を携え洞窟の中へと歩みを進めた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「エア・ガトリング」
魔法の名前をいうというのは集団戦においては重要だ。なんの魔法を撃つかわかるからだ。ただし、魔法術師とやりあうなら事前に暗号を決めていくのもいいだろう。まあ俺が魔法術名の様な声を出すのは、ただ昔魔法術に興奮して魔法術を使う度に声に出していたのが抜けないだけなのだが。
それはおいておいてマイラとレオはコボルトの巣のかなり奥まで来ている。《コボルト》をはじめ《コボルトナイト》、《コボルトウォーリア》、《コボルトアーチャー》、《コボルトアサシン》等多種のコボルトを倒した。
そして今放ったのは空気を固めた弾丸を乱射する魔法術。レオが作ったオリジナル。
「ハアッ!」
「ギャンッ!」
またマイラの槍の突きでコボルトをほふる。
レオはガトリングでコボルトを駆逐しつつ、コボルトの死体を回収する。
そして歩みを進めていくと……。
「最後の扉って所か……?」
金色の装飾が施された大きな木の扉がそこにあった。
「最後の部屋みたいだな。大物がいそうな気がする。」
扉に触れながらそう呟き。
アイテムボックスから
バコッ!
回し蹴りで扉を破り部屋に突入する。するとそこには……。
「グルルル……。」
普通のコボルトの二回りも大きい黒いコボルトがそこにいた。
「エア・ガトリング」
空気の弾丸が飛翔し黒いコボルトを穿つ。
「ハアッ!」
マイラの雷を纏った槍が黒いコボルトを吹き飛ばす。
「ギャンッ」
更にレオが
「ワォン?」
なにが起きたか解らないと言う様な顔で肩から斜めにバッサリと切られ無くなった。
黒いコボルトの死体を回収し洞窟を後にした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ボスの癖に十秒にも満たない時間でやられた黒いコボルトとの戦闘を終え冒険者ギルドに戻っていた。
「レオさんコボルトの巣の討伐は終わりましたか?」
「ああ。素材を見てくれ。」
「そうして素材を出していく。」
総計52個。
一瞬、時が止まった。
「はっはい。えーっと、《コボルト》の魔石が29個、《コボルトアーチャー》の魔石が12個、《コボルトアサシン》の魔石が10個、《コボルトジェネラル》の魔石まで!?。嘘……コボルトジェネラルはKランクモンスターなのに……。」
「オイオイ!こんなガキがKランクモンスターを狩っただって?嘘だろ?おい糞ガキ!おまえどこで仕入れてきた!」
「コボルトの巣の奥。」
「はぁ?何言ってんだ?テメエが奥まで行けるわけないだろ!?」
「黙ってろ。コボルトの方がまだましに吠えるぞ。」
「……テメエ。俺がJランクパーティーの《獅子の爪》と知って言ってんのか?」
「そうか……。そんな大層な名前なのか、俺はてっきり《コボルトの口臭》か何かだと思ったんだが。」
ギルドの人間の多く。下級冒険者は『こいつ死んだな』と思い……。
残りの人間。上級冒険者は『小さければ弱いと思ってる馬鹿が……』と思い。
「死ネェェェェェェェェェェ!!」
男は拳を降り下ろし……衝撃を受けギルドの床をごろごろと転がる。
「雑魚が……。」
倒れた男を見下ろしていると……。
「緊急事態です!」
突然、ギルドの扉が空き男を弾き飛ばす。
「どうしたんですか!?」
倒れそうな彼をギルド職員(受け付け嬢ではない)が駆けつけ支える。
「モンスターの軍勢がアラルスへと向かっています!」
「アラルスに魔物の軍勢が!?規模と速度は!?」
「か……数えきれないほど。小型のものも含めれば何万単位でいる可能性もある。速度は後一時間ほどでここに来る位だ。」
「冒険者たちに緊急要請を、後近くの町に応援要請を!」
「無理です!他の町も襲撃を懸念して応援は難しいでしょう。」
「煩い!難しくてもやるんだ!後領主様に連絡を。」
冒険者ギルドの中は騒然としていた。俺たちが取り敢えずとるべき行動は……
「手の空いている冒険者は城壁に向かえ!」
俺たちは城壁へと向かった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
街道を赤い影が歩く。
前にいる魔物は彼を恐れ我先にと前に進もうとする。
軍勢の前には植物も動物も林も人間も役にはたたない。
彼らはアラルスへと移動していた。
ファントム・スミス ~霊器鍛冶師の成り上がり~ 祐祐 @yuuyuu-masayosi
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