第37話
それは、小さな墓地だった。手入れはあまり行き届いていない、あちこちで積み重なった落ち葉が段を造り、土へと戻り始めている。
蒼也とみとれは、『古城』の墓の前で手を合わせていた。新たな『頂』の持ち主を、蒼也は瞬殺した。だが、結局移り変わりの理由はわからない。東堂、下手をすれば財前理事長も何かしら知ってはいるようだが、円が探りを入れても解らなかった。
「これからどうするの? 蒼也様」
「今まで通りだ、『祭典』目指すんだよ。『不滅のタートルマイスター』がな」
『頂』を取り戻した蒼也は、古城を『祭典』に出すことを決めた。過去の自分を消し、『タートルマイスター』としてだ。登録自体は簡単だが、反発は免れないだろう、まだまだ誤解も何もとけていないのだ。むしろ、死者を冒涜していると取られるかもしれない。だが、蒼也はちゃんとすべてを話そうと思っていた。それで通じなければ、それはそれ。以前なら、『頂』に任せて押し通していた。今でも、それは可能だ。だが、蒼也はそれをしようとは思わなかった。
「『タートルマイスター』は正義の味方だからな」
蒼也は、みとれと手をつないで、墓地を後にした。
『タートルマイスター』は、後世にまで名を残す英雄となった。数ある英雄譚の中でも、彼がとくに名を馳せたのは、その誕生にまつわる諸々と、それを支えた一人の女性の存在。そして何よりも、いついかなる時も『正義の味方』として揺らがなかったからだ。その師である古城道夫もまた、受け継がれるべき偉大な名前として残った。困難もある、敗北もある、絶望もある。だが、蒼也はみとれを決して離さなかった。それは『頂』ではなく、彼の意志がそうさせたことは、2人だけの大切な秘密であった。
不滅のタートルマイスター あいうえお @114514
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