2話 1人目 国際の赤髪

まずは良くも悪くも、僕の人生のターニングポイントと言ってもいい、記念すべき1人目のセフレから紹介していこう。そいつは「国際の赤髪」とかいう七武海みてえな二つ名を持つ、大学でも少し目立つタイプの女の子。国際学部で髪が赤い。今でも1番仲がよく、普通に2人で飯食いに行ったりする。


赤髪との出会いは、僕が入ろうと思っていた音楽サークルの新歓だった。いろんな一年生と話をしたが、当時黒髪の赤髪が「次会った時には私は赤髪になってます」的なことをほざいていて、おもしれえなと思って話しかけた。案の定、その男より男らしい性格とたまに見せる女々しさのギャップが面白くも魅力的でもあり、すごく気に入った。見た目は普通に可愛いと言っていい感じ。なにより、赤髪は男との壁が全く無い。下ネタも乱射、ボディタッチ多め、積極的に話しかけるタイプで、コミュ力が凄くあり、この時の僕は「こいつおもしろ笑」とただただ感心していた。


「カラオケいこうよ」

正直女の子から誘われた気分ではなくて、幼馴染の男友達と久しぶりに会ったし飲みに行こうぜ、的なそんなニュアンスだった。

驚くほど自然な誘いを受けて、断る要素もなく、おっけー、とヘラヘラしながらその日の夜にカラオケへ行った。赤髪はめちゃめちゃ歌が上手くて、どっちかというとワンオクとかそういう刺々しい歌い方が似合ってた。シャウトとかもぜんぜんするし、ツーステップで暴れ出したかと思えば、ゴリゴリのアニソンを可愛い声で歌いだしたりもした。こいつには歌の才能があるんだなぁと頭を撫でてたら、「ねむたぁい」と言って膝枕をせがみだす。赤茶の髪が僕の黒いジーンズに映えていて、薄暗い部屋の中で、ぱちぱちと落ち着かないまつ毛だけが動いていた。あらためて顔を眺めてみると、大きな目と挑発的な唇、笑うとみえる八重歯が印象的で、幼い妹を世話してる感覚に陥る。あどけない顔立ちと赤い髪の毛のミスマッチが、さらに幼さを際立たせていて、不覚にも女性の魅力を感じた。


「おれんちくるー?」


思い出してもアホみたいに気の抜けた誘いで、赤髪はのこのこ僕の部屋に上がり込んできた。

一緒に寝ようか。「寝る」を睡眠以外で使用したのはこれが初めてだった気がする。なんだこれは、と思いつつも順当にベッドに2人で横になり、電気を消した。


10分くらい話をしてた。内容は覚えてないし、たぶん覚えるほどの内容でもない。あれ、これどうやって事を進めるんだろ、そんなことばっか考えてた。気づいたら顔が近かった。近すぎて顔は見えてなかった。たぶん唇が重なってたんだと思う。たぶん。赤髪はなかなかに多彩なアプローチを持っていて、自分の手札の少なさを少し恥じた。今となってはどえむの赤髪だが、この時はかなり攻めに主体をおいてくれていて、経験の少ない僕にはありがたいスタイルだった。そうはいっても、2人は経験的にまだまだ初心者マークを剥がせておらず、うまくできたわけでもなかったので、最後は別々に各々を慰めて終わった。そういえば次の日の朝「じゃ、授業いくよ、またね、もう会わないかもだけどね」と赤髪は言っていたけど、これはいまとなってはカッコつけて言っていただけだってわかる。やっぱ可愛いなあいつ。

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僕と3人のセフレ しょうま @makoto2508

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