作者の描く世界は、透明ではない。
私が感じるのは、もともと透明だったガラスが砂に削られて、波に転がされて、擦れた瓶を通して見ているような感覚を覚える。
古いカメラで撮った風景、色あせた写真、他人から見れば、なんでココを撮ったの?と言われそうな古ぼけた写真。
本人以外にシャッターを切るタイミングは解らない、何も語らないかと云えば、そんなこともない。
不思議と魅入ってしまうストーリーがある、そんなアルバムをめくる様な小説。
ラストまで読んだ、あるいは魅たとき私は何を思うのだろうか。
独りで静かに魅入りたいと想う。
で、ラストまで読んだ感想。
アルバムである。
見ず知らずの、誰かのアルバム、持ち主不明のアルバム。
1枚の写真から、自分で感じる、あるいは読み取る世界。
開いた瞬間から、私はその世界を俯瞰的に眺めているのだ。
共有できない時間、世界、でも感じる空気、潮風も埃っぽい空気も、ここにはある。確かにある。