第5話 めっちゃ嫌そう

1時間半ほど後だろうか。


シチューがたっぷりと入った二つの皿をトレーに乗せ、シスターが扉を開ける。


シスターの顔は満面の笑みだったが、寝転がっている彼を見るとはっとした顔に変わった。


…完全に忘れていた、という顔だ。


そうなると、彼女は二皿も平らげる気だったのだろう。


「あ、あの。え~っと…だ、大丈夫ですか~…?」


シチューを椅子の上に置くと、あわてて彼の元に向かい、ゆさゆさと体を揺らす。


どうやら気を失っている、という訳でもなく、ただ眠っているだけの様だ。


『…う、んん…』


少しして、ナイアの瞼がゆっくりと開く。


体を起こし、呑気に大あくびをすると、シスターの方を振り向き、首を傾げた。


『…おや?先ほどの胸が大きいお嬢さんではないですか。此処はー…ええと、何処でしょうか??確か私は雪道で…』


(…なーんか、心配して損した気がする)


どうやら途中で意識が無くなっていたようだ。


「えっと、此処は、わ」


ぐうううううううぅ。


シスターが説明しようとしたとき、彼の腹から轟音が鳴り響いた。


「……。」


『あ、失礼しました。何日か食べていないので…。』


彼はそう言って、椅子の上に置いてあるシチューを、じーっと見つめた。


目は口程に物を言う、とは正にこのことだろう。


「…あ~…、シチューを二つ作ったので、お一つ、どうでしょうか~…」

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異教徒は、おいでください。 かきのたね @kakinotane7821

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