この物語は、ほろ苦く、切なく、少しだけ優しい。

人生とは有限だ。限られた時間を、いかに過ごすかでしかない。
だけれど、もっとたくさんあるはずだと思っていた時間が、もうほんの僅かだと知った時、あなたはどうするだろうか。
行動を起こすも起こさないも、それは個人の自由だが、この物語にはそれを見守る存在がいた。

人間と自称天使。
主人公と旧友、恋人、多くの人々。
描き出される関係性はとても巧みで、胸を締め付ける。表現、文節、一行、一文字まで丁寧に書かれた物語が心を揺り動かす。
刻一刻と迫る人生のタイムリミットに、彼は何を思い何を為すのだろうか。何処まで折り合いをつけるのだろうか。

これは、時間を忘れ没頭して読める、哀切と優しさの物語である。

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