四. 夢

「もう帰っちゃうんですか? まだ朝ですよ。」

 私は真剣に答えた。

「電車が来るまで待ちたいの。だから…。」

彼は少しがっかりしたように言った。

「じゃあ、見送ります。一緒に行きましょう。」

私と彼は駅についた。やはり何分何時間待っても電車は来なかった。

「…やっぱり、ぼくの家に…。」

「あの…。一つ聞いてもいい…?」

 私は最後に彼に聞こうと思った。

「自分でもよく分からない、あなたは私、私の心のよくなんだと思うの。だから…あんまりここにいちゃいけないんだと思う。」

すると遠くから電車の音がきこえた。彼は答えた。

「そうですか…。それは残念です。…電車が来ましたよ。さぁ行きなさい。」

私は電車に乗った。電車のドアが閉まると、彼は言った。

「疲れた時は、また来てくださいね。」

 私はずっと彼に手を振っていた。彼が見えなくなるまで…。


 気がつくと、私は電車の中で座っていた。窓にあたる雨の音がすごかった。私は寝ていたことに気づいた。すべて夢だったのか。私がポケットに手を入れると何かが入っていた。男の人が見せてくれたガラス玉だった。私は少しうれしくなった。だんだん雨が止んできて空には、満天の星空が見えていた。私は自分を追い込みすぎだったことに気づいた。ときはそのことに気づかせてくれたのだ。雨の音が彼の声に聞こえたのか…? それとも…?

「また疲れたら会いに行くよ、とき。夢の中にね。」

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長い夜に降る雨は あき @COS部/カレー☆らぼらとり @aki0873

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