1-9.歓迎会

「すいません、何か年齢確認出来るものを……」


本日何回目かの年齢確認に自動車免許を突きつける。


「まじで成人……つか26っすか!?」


生年月日を見た大和が目を白黒。


「本当、別の店員がくるたびに年齢確認されてるっすね」


「だから店で飲むの面倒なんだよな」


「俺が心配なのはこのあと未成年に飲ませたとかで捕まらないかってことっすよ」


「大丈夫ですよー!」


完全に出来上がった陽鞠。


「班長はこの辺の警官とはみーんな顔見知りですらー!あはははははは」


笑いながら今度はたんぽぽにじゃれつきにいった。

綾乃は静かに焼き鳥をつまみに焼酎。おやじか。

たんぽぽは陽鞠をはたきつつ一心不乱に唐揚げを食い荒らす。傍らにはオレンジジュース。かわいい。

遠藤さんは誘ったのだが


「今日は家族サービスしないとな」


と、断られた。いいお父さんだ。


始末書は局長直々に


「今日は二回出動して更に新人まで。

大変だったろうしもういいよ」


とのこと。やったね。

その時に歓迎会やると言ったら札束をポンと渡された。

こんくらい一晩で使うってどんな店だ。

もちろん丁重にお返しした。ホントだよ?


「ひまり先輩べろんべろんっすね」


「弱いというか、これおいしそーとか言って色々頼むから……いつも悪酔いしてる」


「慣れてますね」


「慣れてる」


クククとら笑い声。


「楽しいから、良いんだよ」


「そっすか」


楽しい、楽しくいたい。


私にはここにいる目的がある。

それは未だに何も見えていない。

それでも楽しい日々が過ごせたらと思うのは贅沢だろうか。


「どうした?」


大和がこちらを見ている。


「やっぱかすみちゃん、大人には見えないなって」


少しムッとして、


「というかそのかすみちゃん呼び、何で?」


「え?いや、なんつーか」


「何よ」


「俺施設出身で」


「へぇ」


「それで小さい子も結構いて」


「うんうん」


「皆、弟妹みたいで」


「そう」


「かすみちゃんもそうにしか見えない、みたいな?」


「ふーん」


なるほど。


「ちゃん付けは止めて。見た目が見た目で洒落にならないし」

「じゃあ、かすみさん」


「よし、許す」


「……かすみさんかすみさんかすみさん」


「なーによ?」


「これからも、よろしくっす」


やっぱり犬みたいだ。尻尾があれば振ってそうだ。


「よろしくね、大和」


「おーい新入りー?全然飲んでないな?もうギブか?」


「フッ、あやの先輩。俺のポテンシャル知らないっすね。見せてやりまっせ!」


「じゃあ焼酎のポカリ割りで」


「綾乃……殺る気……?」


「いけー!やっちゃえー?」


大和が来て、もっと楽しくなるといいな。


「乾杯」


小生意気な新入りに。


皆の騒ぎを聞きながらグラスを傾けた。

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