1-8.能力無効者
直接執行部の仕事は確保した能力者の能力を解除するまでだ。
トレーラーに積んだ専用の機材で解除する。
正確には魂魄から能力部分をパージするとからしいけど細かいことは解らない。
かくして能力解除した犯人を警察に引き渡して私達の仕事は終わった。
直接執行部に逮捕権も捜査権もないのだ。
「で、何で俺はいきなり頭に裏拳喰らって今正座させられてんすか」
帰りのトレーラーの中、三人に囲まれて正座をする大和の姿が。
「何でってそりゃ、なぁ」
「上司と先輩の指示を聞かずに独断行動」
「そのうえ、結構大事なことまで黙ってたんですからそりゃ、お説教ですよぉ」
「うぐっ……」
しゅんとした大和は主人に怒られた犬のようだ。
心なしか癖っ毛にも元気がない。
「能力無効者ねぇ」
大和から聞いたことを思い出す。
「俺はノンライザーって呼んでるっす。特異魂魄らしくて。
まぁこのこと知ったの最近なんすけど」
特異魂魄。生まれもって能力を持った魂魄。
世の能力者の99%が改造魂魄、つまり後付けな訳で特異魂魄はとてもレアなのだ。
「つまり大和さんは他の魂魄能力も精神エネルギーの干渉を受けないんですね」
私の先観眼の異常もこれが原因だろう。
未来を観ることが出来たのは他にも犯人という要素があったからだろうか?
「まぁそれてま、直接執行部向きだって長官にスカウトされて……本当すいません。
いくら自分が安全だからって、勝手に動いていいわけないっすよね……」
大和が頭を下げた。正座しているからもう土下座だ。
「まぁ、勝手に動いたのは何か言うつもりは無いよ。
大和に好きにやらせたのは私だし、皆無事だったしね」
人質は無事保護。かすり傷も無かったようだ。
「でもね、あまり心配させないでよ
もう仲間なんだからさ」
大和が私を見つめる、すこし考えて
「……ありがとうございます」
少し嬉しそうに言った。
「じゃ、今日このあと空いてるよね空けといて」
「また説教っすか?」
「それ私も嫌だよ……歓迎会やるからさ、奢るよ」
「よっしゃあタダ酒だぁ!」
「班長ゴチになりまぁす♪」
「いやお前らは自分で出せよ?」
「やっぱ女子に出してもらうわけには……いっそ俺が奢って……!」
「破産するまで飲むけど……良いよな?」
騒ぎだした三人を眺めて、そういえば終わってなかった始末書を思い出して、少し憂鬱になった。
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