1-7.先観眼

そもそも魂魄能力とは何なのか。


人の精神、人格、心を形成する魂魄。


それとは別に精神階位に存在するエネルギーに接続することができる。


それが精神エネルギーな訳ですが。


精神エネルギーは想像以上に万能であった。

それこそ、時すら超えられる程に。


というわけで私、羽月華澄も魂魄能力者だ。


呟くと同時に自分の体に精神エネルギーが廻るのを感じる。


改造魂魄、コードEX-096。

色々あって制式化されていないワンオフの能力。


名は『先観眼【フライング】』


数秒~一分先の未来を観ることが出来る。


さっきの大学でもこの能力を使っていたわけで。

学生が飛びかかってくるのを私は予め知っていた訳だ。


これが私の能力。


イメージが固定され私の眼前に数秒先の未来が写される。

まるで出来の悪い映画のようなカメラワークだ。


『……え?なにこれ』


目の前の映像に混乱する。異様なノイズが走っている。

そしてやけに不明瞭な大和。で、その状況。


訳がわからないことだらけ。


意識が体に引き戻される。

何秒未来を観ていようと、実際には一瞬しか経っていない


いくら理解できなかろうと、やれることをやらねば何も、誰も護れない。


『華澄!もう待てない!撃つぞ!』


「待って!私がやる!」


綾乃を制止、同時に飛び出し人質前に踊り出る。

ハンドガンを向けるが、時間切れ。


大和の腕が炎に包まれた。


『大和ッ!?』『大和くんっ!?』


二人の悲鳴。


「あーっひゃひゃ、ざまぁみろ!……え?」


炎はすぐ消えた。燃え散ったのはスーツの袖。

手にも腕にも、何の変哲もない。


「え、なんっぶげっ」


そのまま前に出て、伸ばした腕を犯人の顔に叩き込み、押し倒す。


「よし、確保っ」


「大和!銃を使って!」


馬乗りになった大和に叫ぶ。

銃を取り出そうとしたのかポケットに手を突っ込む。


「てめぇ、ぶっ殺してやる!」


「えっ、なっ、ちょま」


どこから出したのか犯人が握るポケットナイフ。

防ごうとするが間に合わない。


観ていた私以外は。


「やらせないからっ!!」


引き金を引く。弾は決まっていたかのようにナイフに当たり、弾き飛ばした。


「なっ」


「ごめんなさい、ねっ!」


その隙に取り出したハンドガンを犯人の肩に撃ち込む大和。

超即効の協力な麻酔。暫く呻いていたがすぐ静かになる犯人。


「確保できたっすよ!かすみちゃん!」


無邪気に喜ぶ大和。

笑いながら近づいてその頭にフルスイング!

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