第3話 調理場
館の中は、何処も鍵が掛かっていて書斎以外は入れそうになかった。
僕達は廊下を歩く。人の気配は無いのに、廊下はまだ綺麗だ。まるでつい最近まで人が居た様な形跡もある。
やがて辿り着いたのは調理場だ。銀色のキッチン、大きな冷蔵庫。白のクロスが敷かれたテーブル。どうやらここは食事を用意する所らしい。
鉄の様な匂いが鼻に突く。なんの匂いだろう?
見た所、何も変わったモノは何も無い。
冷蔵庫を開けて見る。ジャガイモは芽が出始めており、黒く変色したバナナ、シーチキンの缶詰がある。冷蔵庫の中も、特に変わった物は無い。
次に、キッチンの下の物置の戸を開ける。戸には、包丁ケースが掛けられ、色々な包丁が差さっている。ペティナイフに、薄刃包丁、柳包丁と、包丁の種類は様々だ。気になるのは、これだけの種類があって、魚を捌く出刃包丁が無い。よく見ると、ケースにはあと一つ入れられるみたいだ。……持ち出されているのか?
奥には、鉄製のボウルや、ざる。トレイ。どれも調理器具の様だ。
「……うっ」
四宮は膝を地に付け、口を手で抑えていた。
「大丈夫か?」
「うん、ちょっと匂いで……ごめんなさい。もう大丈夫——」
ふらつきながらも四宮は立ち上がる。
「……少しだけど、思い出した事がある。女の子が、泣いていた。それを私は見ていた様な気がするの」
「女の子が泣いていた?」
「うん、凄く泣いていた。悲鳴のような声が耳に残っている様な……」
そんな時だった。後ろから視線を感じた。それに気付き、後ろを振り向く。
居たのだ。茶色の髪の少女の姿が。
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