【外の世界】
ぽすっと地面に落ちた感触がしたかと思うと、今度は優しく抱き上げられた。
ニンゲンの女が嬉しそうに顔を覗き込んでくる。
「トモ君!ありがとう!すっごく嬉しい!!」
その女はぎゅうぎゅうと、棒のような細い腕で体を締め付けてくる。
「このお尻でっかち、ふわふわで気持ち良いよ」
そして、今度はすりすりと顔をなすりつけてくる。体がグニャリと変形していくのが分かる。
もしかすると、すでに拷問が始まっているとでもいうのか。
「お尻でっかち、正直取れる気せんかったわ」
「お尻極端に大きいからねー」
それよりも、さっきから言う“おしりでっかち”とは僕のことか?
人間というのは失礼な奴だ。
確かに僕は他のヌイグルミ族に比べてお尻は少々大きいかもしれない。だからといって、何度も何度も言う必要なんて無いだろう。
もしやこれが俗に言う、言葉攻めとかいう拷問なのか?なんて事を考えていると、くるりと逆さまに向けられた。
「あ、見て見て!!お尻に*マークがある!」
そう言うとニンゲン女は間髪入れずに僕のお尻に指を突き立てたのであった。
「?!?!!!?☆!?」
違う。これは拷問とかではない。
こいつらただの変態だ。
お尻に指を突き立てられたショックのあまり、暫く放心状態になっていた僕は、バタンッという音に跳ね起きた。
いつの間にか別の場所に連れて来られてしまったようだ。
箱の外の世界は実にコロコロと景色が変わる。
それは、僕たちが居た、見た世界はニンゲン達にとってはほんの一部で、ちっぽけな世界だということを教えられた。
それにしても、変わった箱だな。見慣れない物ばかりだ。
「お!新入り、目覚ましたか。おーい、お仲間のお目覚めだぜ!」
「「ようこそ!ようこそ!」」
変わった部屋の中をぐるりと見渡していると、四方八方から声が飛んできた。
今気がついたが、色んなところにヌイグルミ族の姿が見えた。まさか、またUFOキャッチャーの中なのか。
でも、この箱の中にはアームや穴などは見えない。
「よく来たな。」
一匹の大きなオオカミ型が話しかけてきた。
「あ、初めまして‥僕は茶々と申します。‥ここは、UFOキャッチャー内ではないのですか??もし、そうでなければハニーという方はご存知でしょうか?」
急いで聞く僕に「そう興奮することはない。ここはニンゲンにとっては時が流れゆく場所だが、俺たちにとっては時がないと言えるくらい静かな場所だ。ゆっくり話したらいい。」と、長い尻尾で背中をさすってきた。
そして、ふかふかなクッションに座らせてくれるとコホンと喉を鳴らし、まずはと口を開いたのだった。
家族ごっこ。 Asuka @asu57
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