未来伊勢物語

青出インディゴ

天離る火星の旅路を翔びくれば

 今から少し先の未来、ある男がいた。

 男の名はなりひらといい、年は25歳で、彼女にフラれた直後で、転職直後でもあった。現在、(株)テラ運輸トランスポートという中小企業で、スーパー・エグゼクティブ・サポート社員として、業務用宇宙船に乗りこんでいる。

 転職に際して、彼が努力しなかったというわけではない。数か月間目を皿のようにして転職サイトを探したが、これといってやりたい仕事は見つからなかった。彼のやりたい仕事、それは「なにか文学的な仕事」であった。「テクスト」とか「底本」とかウィトゲンシュタインとかソシュールとか、そういう言葉が飛び交うような仕事。本当のことを言って、そのどれひとつとっても彼はよく知らないのだが、そういう仕事こそが自分がやりたい仕事だと思いこんでいた。しかし具体的にどういう仕事がそれにあたるのかはよくわからなかった。それで、大学の文学部を卒業して3年、職を転々としながら食いつないできたのだが、つい先日とうとう、たったひとりの理解者であったしらたまにも愛想を突かされた。

 絶望。絶望である。キルケゴールである。

 未来男は苦悩を噛みしめながら、宇宙船の外に広がる宇宙空間を眺めていた。圧倒的な暗闇と、ぽつりぽつりと浮かぶ雄大な光の玉に、ここならすべてから逃げられるのではないかという気がしていた。就職も、文学も、彼女も、なにもかも糞喰らえだ。聞けば惑星間運輸会社の社員というのは、業務が重なれば5、6年自宅に帰らないこともあるそうだ。家族が寂しがらないのかと思うが、通信技術が発達している現代だからこそできるわざだろう。きわめて好都合なことに彼は独身だ。スーパー・エグゼクティブ・サポート社員という、なんだかわけのわからない身分だが(契約書を見ても理解できなかった)、たぶんその気になれば死ぬまでこき使ってもらえるだろう。もう地球へは帰らない。そう考えると、皮肉なことに胸が躍ってくる。

 テラ運輸の業務用宇宙船にはいくつか種類があるが、これは最もスタンダードなタイプの中型輸送船だ。MARSMAXスピカ11号というらしいが、たいてい単にスピカと呼ばれている。巨大な後部積載室のほかに、操縦室、個人用キャビン2室、キッチン、バス、トイレといったちょっとした居住空間がくっついている。今回の積荷は火星の個人商店へ卸す品々だ。中身は主にインスタント食品、洗剤、歯ブラシ、かみそり、タオルその他の日用品である。

 とはいえ、未来男は単なる日用品を運んでいるとは思いたくなかった。銀河を眺めながら、なにか特別重要なもの……たとえば兵器とか機密書類とか金銀財宝とか、そういうものを運んでいる夢想にふけった。おれは流浪の旅人。磁気嵐に遭おうが、宇宙海賊に襲われようが、体ひとつで立ち向かってやる……ところが、彼の最も苦手とする分野はスポーツなのだった。実際には彼の仕事はただのアシスタントである。積荷の上げ下ろし、現地での折衝、船内の環境整備その他もろもろ、すべて航宙士パイロットの仕事をスムーズに進める手伝いだ。そもそも宇宙船に乗っている中で最も重要なのは航宙士であろう。

 それでも未来男は空想にふけりながら、宇宙船の小さな窓に手をあててつぶやいたものだ。

「やれやれ、遠くまで来ちまった。母なる地球はあんな小さな点だぜ、相棒。遠くまでと言えば、あれだな。『万葉集』の」ここまで言って息を吸いこんだ。


 あまざかひなながゆ恋ひ来れば明石のより大和島見ゆ


 朗々と詠唱して機嫌をよくしていたが、すぐにまた堕ちこむ。

「ああ珠子ちゃんがいれば……」

 大学時代の彼女がいれば、和歌談義でひとしきり盛りあがっただろう。しかしあのころの珠子はもういない。今いるのは、いつまでも定職に就かないことにあきれ、5年つきあった恋人に愛想を尽かした25歳の彼女だけだ。

 いいんだ。未来男は首を振っていやな思い出を遠ざける。今はこの星々だけが恋人さ。火星ではどんな刺激が待ち受けていることか。実際には地味な仕事であることなど、とうに忘れているのである。

 彼は自分でも一首詠もうと思った。それがいい。

あまざかる火星の旅路をびくれば……」

「成平サン、成平サン、操縦室まで行ってクダサイ。コレタカさんがお呼びデス」

 天井からキンキン声が降ってくる。宇宙船スピカの機械音声なのである。船自体が人工知能を持っているので、船内どこにいても船とのコミュニケーションが可能なのだ。それが時にわずらわしい。

「ええと、コレタカさんがなんの用ですか?」

 未来男は小さな声で訊いた。人工知能とはいえ出会って数日の相手と話すのは緊張する。

「知りマセン。あなた、あたしの言うことを聞いてればいいのよっ!」

 なぜか叱られたので、未来男は委縮してそれ以上なにも言えず、座っていたリクライニングから立ちあがった。

 キャビンを出て、通廊を道なりに歩いていく。スピカは声を発しなくなったが、どうも天井やら壁やらから監視されているような気がして心地悪い。未来男が曲がりなりにもこの仕事に応募したのは、宇宙を自由に駆けめぐるロマンを感じたからなのだが、現実は全然違うようだ。

 操縦室に向かう途中、キッチンの横を通りかかるのだが、そこでは白い優美な肢体をした女性型アンドロイドが調理中だった。彼女もまたスピカである。なんらかの作業で手足が必要なときは、このアンドロイドになって動くのだ。機械とはいえどことなくなまめかしい体つき、古風な整った目鼻立ちは、古今東西のあらゆる映画女優を思い起こさせる。事実、彼女の容姿はコンピュータによってすべての映画女優のデータの平均値をとって造型された、まさに究極の美の極致なのだ。ただし、100年前の。決して業績好調とはいえない本社は、信じがたいほど備品の物持ちがいいのだった。

 未来男がなんとなく見とれていると、視線に気づいたスピカはすさまじいにらみをきかせてきた。

「なにか用デスカ」

「あっ……いえ」

「あたし、料理中にうろうろされるの嫌いなのよね。さっさと行きナサイ!」

 ナイフをぎらつかせて威嚇する。未来男はとっとと退散した。

 ヒステリーA.I.だ。ひどい宇宙船に乗りこんだ。

 ほとんど駆けこむような姿勢で操縦室に身を入れると、航宙士のコレタカがコントロールパネルの上に両脚を投げ出した姿勢でいて、そのままこちらを向いた。

「よう成平くん」

「あっ、どうも。それで」

「うん、煙草吸っていいかな?」

「あっ、はい」

 コレタカは宇宙服の胸ポケットから煙草を取り出すと、自分で100銀河円ライターで火をつけてぷかぷかやりだした。操縦室に煙が充満していく。

 体感時間で1分くらい経ったと思う。未来男はおそるおそる口をひらいた。

「えっと、コレタカさん。それで、用は?」

「うん?」

「なにか用があって呼んだのでは?」

「あっ、煙草吸っていいかってだけ。それ訊きたくて」

 コレタカはハンサムな顔をにこりともさせずに言った。至極真っ当な顔つきだった。彼の国の冗談なのだろうか。たぶん冗談じゃないのだろう。

「気にせずどんどん吸ってください。そもそもぼくはここにいませんでしたし」

「でもここからきみんとこまで煙が流れていったら? ないとは言いきれないよね。想像したらいても立ってもいられなくなっちゃって」

 地球を発ってまだ3日。それはこの男とのつきあいもまだ3日ということである。先輩社員のコレタカ氏は未来男より10歳くらい年長で、また勤続年数もずっと長いらしいが、今回ぺーぺーのスーパー・エグゼクティブ・サポート社員とコンビを組まされたのは、ひょっとすると誰も彼と一緒に仕事したくなかったからなのではないか。そんな疑念が脳裏をかすめた。

「まあ座ってよ。これから長いよ」

「えっ、なにがです?」

「長いんだ。1年だもんね。気をつけないと、いろいろあるんだよ。簡単な仕事だと思ってるでしょ。そうじゃないんだよ」

 未来男は眉間に寄ったしわを取り繕うことができなかった。コレタカは煙草をぷかぷかやって気にもしないらしい。というか、こちらを見てすらいない。

 初めて会ったとき――本社の事務室だったが――未来男から見たコレタカの印象は、とんでもない美青年だということだった。背も高く、アイドルグループ〈磁気嵐〉のメンバーといってもおかしくないくらいの顔立ち、白いポロシャツにジーンズ。スポーツだったらテニスかフェンシングをやっていそうな、健全でさわやかな雰囲気を漂わせていた。未来男は、こいつはJOCKSだと即座に決めつけ、密かに敵と見なした。社会人になってからも学生時代の考えかたが抜けず、JOCKS野郎には近づきたくないと思ってしまうのだ。そういうところも彼女にフラれた一因かもしれない。

 だが今、未来男は自分の認識が誤っていたかもしれないと思いはじめていた。

「前のときはさ、あ、2年前だけど、きみが入る前、宇宙ナメコと遭遇してね」

「えっ、すいません、もう一度?」

「遭遇してね」

「あ、その前です」

「2年前」

「そのあとです」

「え、まさか宇宙ナメコ?」

「え、もう一回?」

「宇宙ナメコ?」

「う、宇宙……」

「ナメコ?」

「宇宙?」

「ナメコ」

 キルケゴール! 未来男は絶望して頭を抱えてしまった。コレタカは目を瞬かせている。

「ナマコじゃなく、ナメコなんですか? せめてナマコならわかりますが……」

「ナメコだよ。どう違うの?」

 未来男はぎゅっと目をつぶる。暗闇の中、コレタカの声が聞こえる。

「宇宙ナメコの話、聞く?」

「結構です」

 積荷を無事送り届けられるのか心配になってきた。この人、本当に宇宙船の免許持ってるんだろうか。でももう地球は遥か後方になってしまった。今更帰れないし、自分は宇宙船の操縦ができない。恐ろしいことだが、この人に命を預けるほかないのだ。そうだとしたら、もはや腹をくくって仲良くしておくに越したことはない。

 コレタカは勝手に話を続けていた。

「ほかにもさ、宇宙の旅にはいろいろあるんだよー。一番多い問題はなんだと思う? ヒント、人間関係。……あ、答え言っちゃった。まあいいや、人間関係ね。1年も一緒にいるでしょ。やっぱさあ、いろいろあんのよ。だからおれはそういうところ大事にしていきたいなって思うわけ。煙草とかね。成平くん、煙草吸う?」

「いえ」

 なんとなく最初の話題とつながってほっとしたそのとき、操縦室の入り口があいた。

「お夕食デスヨ! 今日のメニューはパスタ・アモーレ!」

 美しい女アンドロイドが銀の盆を持って入ってくる。

「やあ、ありがとう。そこに置いて」とコレタカ。

 スピカはロボットにできうる限りにっこり微笑み、言われたテーブルに盆を置いた。2皿のパスタがほかほかと蒸気を立ち昇らせている。ソースが赤いのでトマトのパスタのようだ。その他、野菜やタンパク質的ななにかも載っているようだ。

 未来男とコレタカは、スピカの機嫌を損ねないうちにとっとと席に着いた。

「おいしそうですね」と未来男は言ったが、本心だった。食べはじめたコレタカもうなずきながら同意している。

「本当においしい。このタンパク質的ななにかはなんなの?」

「知らないほうがいいデスヨ」

 スピカはコレタカを見ながらにっこり笑う。

「ひとつだけ言えるのは、この宇宙船はリサイクルシステムを完備しているということデスネ」

「いただきます!」

 未来男はそれ以上聞きたくなかったので、急いで料理を口に入れた。そして火を噴いた。

「成平くん?!」

 もちろん火を噴いたというのは比喩だが、そうなりそうなくらい、とんでもなくからいのだ。コレタカが目を見張っている前で、あまりのからさに未来男は室中を飛びまわる。悲鳴をあげ、喉を掻きむしる。その様子を、コレタカは呆然、スピカはロボットらしく平然として見ている。

 少ししてやっと口の中のからさがおさまってきて、くたびれはてて席に倒れこむ。スピカをにらみつけた。

「タバスコソースじゃないか!」

「ええ? トマトソースだと思うがなあ」

 コレタカがのんびりと言う。スピカはなめらかな動作で肩をすくめた。

「すみマセン。間違えたんデスネ、きっと」

 そう言ってさっさと出て行ってしまった。

 スピカがいなくなってから、未来男はコレタカにまくしたてる。「ロボットが間違えますか?!」

 コレタカは唇に人差し指を立ててシーッと言う。

「気をつけろ。おれたちはスピカの脳内で暮らしてるようなものなんだよ。どこにいても、なにか話せばあの子には伝わっちゃうんだから」

 未来男は口をつぐみ、ひそひそ声で続けた。

「わざとタバスコソースにしたんだ。彼女はぼくが嫌いなんだ」

「嫌いってことはないと思うがな。それともきみ、なんかした?」

「なんかってなんですか、ロボットに対して。コレタカさん、彼女とはどのくらいのつきあいなんですか?」

「しょっちゅう一緒の船になるよ。でも、あの子扱いづらくてね。それはわかる。会社の人たちも困ってるみたいなんだよね。だけど高級設備だから、壊れてもないのに取り替えできないみたいなんだ。なんでいつもおれと組まされるんだろう」

 やはり本社ではコレタカもスピカも厄介者扱いらしい。今の言葉で確信した。

 往復1年が過ぎたら、すぐさま次の職場を探そう。そもそも期間を無事に終わらせられるとも思えないが。よしんば無事に過ごしたとしても、本社の評価は「コレタカとスピカを扱えるヤツ」になってしまうだろうし、そんなことになれば以後の勤務環境は絶望的だ。ああ早く地球に帰りたい。

 天離る火星の旅路を翔びくれば……

 コレタカがまだなにか愚痴り続けているが、未来男はぼんやり自分の世界に閉じこもり、和歌の下の句を考えていた。やはりおれには文学しかないのだ。なにか宇宙の素晴らしさを称えた句がいいな……。

 突然警報が鳴り響いたのは、そのときだった。

 ブーッブーッブーッという、一昔前のブザー音。天井の警告灯が赤く高速回転しだす。

「なっ、なんですか?」

「わからん。流星群か、小惑星か、宇宙海賊か――」

「ええっ?! どうしよう、どうしたらいいですか?!」

「座れ!」

 そう言ってコレタカは自分が操縦席に座り、操縦桿を握る。

 床ががくがく振動する。フロントウィンドウに映る宇宙空間が上下斜めに激しくぶれる。

「スピカ!」コレタカは叫ぶ。「状況を説明しろ!」

 天井からキンキン声が降る。

「流星群の密集帯に飛びこんでしまったようデス」

「嘘だろ、天気予報では言ってなかったのに!」

「織姫予報ばかり見るからデスヨ。いいデスカ、正確さではオリオン予報に勝るものはありマセン。コレタカさんはかわいい女の子を見たくッテ――」

「今そんな話はどうでもいいだろ! それより操縦桿がロックされてる! 解除しろ!」

「知ーらナイ」

 ぷつりと、音声は消えてしまう。こんな人工知能があるものだろうか。いや、ここにあるのか。渦潮の中のプランクトンのように揺さぶられながら、未来男は絶望的な気持ちで考える。

「成平くん、床に伏せるんだ! だいじょうぶ、いつもあることだから!」

 未来男は言われるままに床に這いつくばる。フロントウィンドウに、次々にこちらに飛んでくる無数の白い光が移しだされている。流星群だ。操縦席に向かって叫ぶ。

「いつもって、彼女いつもああなんですか?!」

「いつもっていうのは、流星群とかに遭うのがってこと! 宇宙船がスネて操縦桿が動かないのは初めて!」

 キルケゴール!

 未来男は天井を向いて精いっぱいの声を張りあげた。「スピカさん、ぼくがなにかしたんなら謝りますから! コレタカさんに操縦させてあげてください! このままじゃあなたも一蓮托生ですよ!」

 こういうときって一蓮托生でいいのかな。辞書を引きたいが、この状況で読んだら酔ってしまうだろうからやめておいたほうが賢明だ。

 突如、爆発のような激しい衝撃が起こる。船体尾部のようだ。流星のひとつがかすめ飛んでいったらしい。

 ああ珠子ちゃん……もう一度会いたかった。馬鹿な仕事に就いたもんだよ。あなたの言うとおり地味で堅実な職業を探したほうがよかったです、ハイ。

 未来男が覚悟を決めていると、多少トーンの下がったような感じのするキンキン声が降ってきた。

「ううう流星ぶつかってめっちゃ痛い……」

「でしょうね!」思わず未来男は言ってしまう。

「成平サンのせいじゃないデス。ただ、あたし……あたし……」

「スピカ、だいじょうぶか! すぐ助けるから!」

 割って入ってきたのはコレタカだ。スピカの声が華やいだものに変わったようだ。

「コレタカさん、あたしが心配……?」

「そりゃそうだろ」

「ごめんナサイ、あたしヤキモチやいてたの……」

「そうだと思ってたよ」

 そうなのか、全然わからなかった。と、必死に床にしがみつきながら未来男は思った。

「いつもきみだけを見てるんだから心配するな」

「いやっ、言葉だけじゃ信用できない」

 ひときわ船が揺れ、複数の流星が船体をかすめて通りすぎ、塗料のかけらが宇宙空間を飛んでいく。

「わかったわかった、真珠を買ってあげるから」

「ええっ? ロボットのあたしに?」

 なんでもいいから早くしてくれと未来男は思う。

「もちろん。火星に着いたら一緒に見に行こう。でかい駐車場のあるところな――おっと」

 最後の「おっと」は操縦桿のロックが解除されたのに気づいた声らしい。

「きみならわかってくれると思ってたよ」

 轟音を立てて船が揺れ、未来男は台風の中のたんぽぽの綿毛のように上下左右に揺さぶられる。意識が遠のいていくのと、コレタカさんが気勢をあげて宇宙船の操縦を始めたのは同時だった。


 目を覚ますと、すべては平常に戻っていた。床はそよとも動かず、警報も消え、宇宙空間の静寂が辺りを支配している。流星群を抜けたのだ。

 見まわしてみたところ、船に大きな損傷はなさそうだった。操縦席のコレタカが涼しい顔でコントロールパネルに両脚をあげ、煙草を吹かしている。

「成平くん、これが宇宙だ」

 なにが宇宙かは知らないが、思っていた宇宙ではなかったのは事実だ。未来男はまだ頭がぐらぐらするのをどうにかやりすごす。

「帰りたくなったか?」

「はい」

 すぐに肯定する。突然故郷に対する愛しさがどっとこみあげてきた。母なる地球。どっしりした大地のなんと頼もしいことか。生きていくなら、やはり大地の上でないと。地球に二度と帰らないと思っていたことが嘘のようだ。

 と、コレタカはにんまり笑う。「忘れてないだろうな。1年は帰れない」

 そこで一首詠んだ歌。


 天離る火星の旅路を翔びくれば遥か彼方の地球や恋し

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