年季の入った遊園地のお化け屋敷。
絶妙なレトロ感のある90年代ハリウッドホラー映画から想を得た「怪物」たちは……
こういうものまで「クトゥルフ神話」空間に飲み込むこのコズミックホラーの懐の深さ、そして作者様の、この世界への愛の深さと名状しがたき者たちへの親密さに唸るべきかも知れません。
巨大な恐怖を前に完全に無力で滑稽でさえある人間と、それを宇宙的なおぞましきものに無理やり結びつける傀儡たち。
人間は卑小で邪悪だが、おぞましき者どもは善悪を超えて偉大である、その対比。
形代さんは何者でしょう。
エーリッヒ・ツァンを少し思い浮かべるのは的外れでしょうか?
予言します。この作品は流行る! ホラーランキング一位を取る!
それだけの力強い恐怖と得体のしれない怖気を匂わせる筆力を感じました!
古めかしい文体を見事描ききる技量に引き込まれながらもクトゥルーの味も鮮烈な第一話、短くも冒涜的な想像をくすぐる第二話、無垢が無垢のままに狂気に飲み込まれて融け合う第三話、このレビューを読んでいる貴方もすぐに読みましょう! どちらもとびきりの名作となっております!
ああ、それにしても。
第二話において爆撃を行っていた側からはどんな風景が見えていたのでしょうか?
米軍が歴史的な重要拠点の爆撃を止めさせたのは本当に文化財を守るためだったのでしょうか?
――――眠れる子は何処でその目覚めを待っているのでしょうか?