五話 アリエイアの森


カオティックなオフ会から帰宅した午後21時過ぎの自室。

ベッドに横になりながら先ほどの事を思い返していた。

というのも、帰路が皆途中まで同じだったから皆で帰ってる途中でいじられたり好きなEFOの服やらスキルやら雑談したりとか色々あったけど…何だかんだで。


「面白かったな…オフ会」

絶大なダメージを被ったけどさ、そもそもオフ会とか危険物の塊みたいな風にしか思ってなかったから逆に新鮮だったというか。

何よりも、出来過ぎてる位に皆

ましろの家が意外と近くて送って行った事とか彼女が出来た事とか…ましろの事とかましろの事とか…

今でも正直、疑ってるし。


「本当に色々あったなぁ」

信じられない×100万位、濃密すぎる1日で頭がパンクしそうだよ。


「ってか」

「彼女かぁ~~」

もうね、伝わらないかもしれないけど嬉しいんだよ。

この俺がさ!ネトゲで人生が成り立っている様な俺に彼女ですよ。しかも美少女。

しかも同級生っていうね。

ってか…進学出来なかったって事は、ましろはお姉さん…?なのか。


「ふへぇ」

こういうのが知れたら親とか友達に何を言われるか…

けどまぁ…悪い気はしない。けど複雑。


‥‥‥

あ、そういえば。


【サリシクイネ・オンライン】


うつつを抜かして忘れてた。


「脳にリンクしてログインする」

あの場に、集まった事も…今から始まる事も正直にわかに実感が湧かない。

そもそも…


………


「脳死…?」

はぐらかされてしまったあの時の会話が不意に頭をよぎった。

【って事はさ、このゲームで死亡回数が増えて脳死時間が伸びると最後は…】

【現実で死にます】


「まさかな…」

ネットゲームで死ぬとか…死ぬとか

……

「んーーー」

何か考えれば考えるほど、凄いもやもやする。


「はぁ…まぁとりあえず寝よう」

やってみない事には分からないし。

それに何だかんだで疲労感がヤバい。

静かに重い瞼を閉じると、気が付けばあっという間に俺はそのまま眠りに落ちていた。


    ↓

††††↓††††

    ↓

    ↓


クロム「んっ」

ベッドに横になっていた記憶から刹那、いつの間にやらアリエイアの森にいた。

クロム「本当にログイン出来るんだな…」

パソコンでログインIDやらパスワードを打ち込むでも無く…ただ寝るだけで。

謎の原理を考えれば考えるほど、やはりもやもやする。


クロム「にしても…」

気を取り直し、周囲を見渡すとログアウトした時と変わらない風景が広がっている。

ただ昨日と違う物がひとつ。


クロム「なんだあれ」

何かでっかい蜘蛛みたいなのが、視界の奥でドスンドスンという衝撃音を出しながら歩いている。

それこそ縦だけで言うなら3m位はある。

目視すると同時に、視界の蜘蛛付近にHPの様なものが出現した。


クロム「えっと…デッドスパイダー?」

デッドスパイダー【Lv110】

とりあえず赤いまだらの様な模様がやばさを物語っている。

間違いなく麻痺とか猛毒とか使ってくるじゃん…

大体、敵の形状でどういう事してくるか分かって来るよね(MMOあるある)


クロム「アクティブじゃないよな・・・」

MMOでは、ノンアクティブ(攻撃しない限り敵視しない敵)とアクティブ(積極的に殺ったるで)の2種類のMOBが居る、他にもこちらの魔法に反応したりする敵もいるが…


クロム「とりあえず、避けながら移動しよう」

木を遮蔽物にして身を潜め、様子を伺う。

周囲には、俺以外にプレイヤーの気配は無くMOBが溢れていた。


クロム「ってか・・・どこに行けばいいんだ」

結局、MAPの出し方も分からないし目的地も分からないし

そんな事を思った瞬間、ふと昨日の試行錯誤ログアウトした時の事を思い出した。


クロム「えっと」

自身の見えてる視界で人差し指でつつく様なモーションを取ると。


クロム「あ、出た」

ログアウトやアイテム欄、装備、スキル、フレンドなど色々なメニューが現れた。


クロム「地図地図」

その中でにあった巻物のボタンを押すと。

MAPが開き現在位置が表示される。


クロム「今いる場所がアリエイアの森で…」

見てみたは良いが、なるほどわからん。

このアリエイアの森が想像以上に広いのかそもそも建物や町が表示されない。

映っているのは緑一色。


クロム「樹海じゃん・・・」

クロム「ん・・・?」

何か後方が騒がしい。

ドドドドドドドドドドドド。

振り向くと、何故かデッドスパイダーが全力疾走でこちらに向かって来てる。


クロム「ナンカキテルンデスケドォォォォォォ」

完璧なアクティブMOBでしたー!

臨戦態勢!と言っても装備してるはずの武器が手元に現れない!

アイェェェェナンデ!?

スキルもアイテムのショートカットも何も無い。


クロム「あれ、これやばいんじゃね?」

気がつけば、目の前にはデッドスパイダーの足。

クロム「イヤァァァァァァ!?!?」

サヨナラ俺の初冒険。

とか死期を悟った…。


クレアリム「イーグレット・エアレイド!」

突如、上空から巨大な鷺がデッドスパイダーに体当たりを仕掛けそのまま跳ねのける。


クレアリム「INしたと思ったら本当だらしないわね」

背後にいたのは、紗癒さんだった。


クロム「紗癒さん!」

やったで工〇!!これでかつる。

クレアリム「お喋りは良いから、とりあえず自分の腰辺りを軽く叩いてみなさい」

ダルそうにする紗癒さんの言うとおりにすると・・・


クロム「お、おおぅ!」

ボンッ!!

なんと武器が出ましたー!やったー!これで勝てるぞ!

現れたのは、アルカ・フォシルお馴染みの少し長めの属性長剣が2本。


クレアリム「スキルは、EFOの時のままみたいだからスキル一覧見れたら技名唱えるだけで使えるわよ」

言い終えた紗癒さんが、颯爽と倒れたデッドスパイダーに駆ける。

そのまま、紗癒さんが詠唱をすると連動して先ほどデッドスパイダーを跳ね飛ばした鷺が上向きになってるデッドスパイダーを掴み空中へと投げ飛ばす。


クレアリム「ゲイルブレイド!」

投げ飛ばされたデッドスパイダーの周囲に紗癒さんの魔法陣が出現、風の刃が空中で蜘蛛をを切り刻みとどめをさした。


クレアリム「基礎はEFOの終盤MAPのMOBと同じみたいだから気を付けなさい」

狩り終えた、紗癒さんが手を腰に添えて言う。

おおぅ、紗癒さんかっけぇ…

ってか適応力早いな~


クレアリム「下手に、攻撃喰らうと猛毒とかで速攻死ぬわよ」

あぁ、何処かで見覚えがあったフォルムだと思ったけど。

EFO後半マップのデイムンドの骸淵がいえんと言うLv110~130までの狩場にいたモンスターだ。

俺もEFOでLv110になったので数回はいった事があるが、10回中10回デバフで殺されている。

適正レベルじゃ絶対ソロで倒せない奴


クロム「了解です、色々申し訳ない…」

クレアリム「とりあえず少ししたら残りの2人も来るだろうし、あたしの鷺とあんたでヘイト持って適当に狩るわよ」

クロム「りょうかい」


††††VS††††


クロム「うぇぇ…きっつ…」

ただでさえ、適正ではあるが高難度MOBの山とだけあってヘイトを紗癒さんの召喚PETと交互に受けて耐えているが、1発受けるだけで1割はHPを持っていかれる。

今は回復薬がん飲みで何とか頑張ってるけど…

ここが初期MAPって俺よりLv低い人とかどうするんだろ…


クレアリム「まぁ近接職だとどうしてもきついわよね」

クロム「EFOの後半MAPとかのデバフってやばかったんですね…」

もう本当に、麻痺に猛毒に混乱やら鬼畜な状態異常持ちが多すぎて…


クレアリム「これできついって言ったら何もできないわよ…?」

クロム「ですよねー」

クレアリム「あんた武器8割集めたんでしょう?」


うん、集めました。

けどね、EFOの武器の8割って大体Lv100までのIDで取れる物で、それ以降の装備ってクラフト装備って言う俗に言う生産シリーズとエンドコンテンツの廃人装備が主流だからさ

まぁじゃないとアルカ・フォシルになれる人が限られちゃうから、ある意味親切設計なのかもしれない。


クロム「俺まだLv120のエリア行けてないですし…Lv100までのIDじゃ、ギミックはきついですけど状態異常こんなに酷くないですもん…」

クレアリム「まぁ、それもそうね」

とか、言いながらもデッドスパイダーを討伐。


クロム「お」

クレアリム「あら?」

何か、通常の蜘蛛の足とか言うドロップ品に混ざってファンッ!という壮大なSEと共に輝くエフェクトを帯びたアイテムがドロップした。


クロム「これってレアドロップですかね?」

クレアリム「多分そうじゃない?」

ドロップしたのは、蜘蛛の触角。

やったよレアドロップだよ!


・・・・・・で。


クロム「これ何に使うんですかね」

ってか、そもそも蜘蛛に触角はありません。

そして、もさもさしててキモイ!


クロム「何かの素材かも知れないけど…」

クレアリム「装備の材料とかかしらね」

かもしれない。

こんなもさもさした触角?を使った武器とか防具つけたくないんだけど


クレアリム「まぁとりあえず取っときなさいよ」

クロム「お、俺いらないんで紗癒さんあげますよ」

クレアリム「渡したら…殺す…」

ひぃぃ。

殺意が滲み出てらっしゃる


!!


ふと、視界に突然ましろと奈菜さんが現れた。


ナノン「やっほ~、2人共もういたんだねー」

スゥ「さっきぶり~」

小さく2人は手を振る。


クレアリム「あら、もう30分も狩ってたのね」

気が付けばメニューに常備された時計が夜22時過ぎを示してる。

ってか寝てる時にしか出来ないゲームなのに時計の意味あるのかな。


ナノン「わーだからとうくんLv117になってるんだね」


え?


あれ、本当だLv117になってる。

100を超えるLv帯で、30分で2Lv上がってるって効率おかしくない?

従来のMMORPGなら、PTを組んだ際に組んだプレイヤーの平均Lv差に応じて討伐時の経験値に何十%かの減衰がかかるんだ。


クレアリム「あたしとのLv差があるにしても大分おかしい効率ね」

ナノン「いいなー私も上げたいー」

クロム「そうしたら、さっきMAP見たんですけど…この辺に町見当たらなかったんで少し進みながらLv上げしませんか?」

クレアリム「そうね、町に着く頃にはこの効率ならあたしもLv130になれるかも」

ナノン「やった!そしたら皆で狩りだー!」

スゥ「(*・ω・*)おー!」


合流した2人が混ざり、俺らは町を探す。




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電脳と現実のクロム りり @toririd

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