四話 自己紹介は致命傷です
店内に入ると、コーヒーの落ち着いた香りと…俺達 を迎えてくれる可愛いメイド風の女の子が…
ん…?
何でメイドがいるの?
「おかえなさいませ~ご主人様♪」
数名の可愛いメイドさんに迎えられた。
「あの…奈菜さん?喫茶店で集まるんじゃ?」
「喫茶店じゃない?」
「いや、あの、メイドさんが居るのはなぜですか」
「メイドっ気の強い喫茶店だよ?」
そこで【メイドカフェ】ってならない辺り間違いなく、これ何言ってもダメな奴だ。
「冗談じゃないけど!冗談!メイド喫茶に見えるけど、店員さんの制服がメイド服なだけで普通の喫茶店だよ」
今、じゃないって言ってますよ先生。
確かに、回りを見回しても定番な「○え萌○キュン?」とかみたいな事してる人はいない。
お!可愛いメイド店員さんと目が合った!
「ぐふぉっ」
すかさず、隣にいた腹部にスゥの高速ストレートがヒットした。
こ、こやつ心を…っ
「? 何してんの?」
怪訝な眼差しが紗癒さんから飛んでくる。
哘さんより怖い。
「いや、何でもないです…」
「ほら、皆!右奥の個室にいくよー!」
いつの間にか奈菜さんが受付を終えて手招きしてる。
「そうだ!とうくん!メイド服の貸し出しコスプレサービスもあるらしいよ!」
「っ!」
いや、スゥそこに反応するのお前と違う。
「だ、大丈夫です」
「えーーーーーー…残念」
「(´・ω・`)!?」
何で!?みたいな顔をスゥと奈菜さんに向けられながらも俺たちは個室に入った。
††††††††††
入るなりもう決まっていたかの如く俺の右にスゥ、俺の正面に紗癒さん、スゥの正面に奈菜さんと席に腰掛ける。
「おー思ってたよりも普通だ」
「喫茶店なんだから当たり前でしょ」
いや、まぁそうなんですけど。
内装は、こう言葉にするとパッと浮かばないけどモダンアンティーク?的な何かお洒落なテーブルと椅子が並んで、良い感じの雰囲気なんだけど。
ただね、紗癒さん。
「紗癒さん、これは普通なんですかね…」
「ごめん、あたしが悪かったわ…」
初めて、紗癒さんと共感できたよ!
そこにあったのは、照明…なのだろうけど…何故に…
燈籠…?
「最近の喫茶店って変わってるんだね~」
あの、あなたが連れて来たお店ですよ。
それに、普通の喫茶店はこんな天井から机まで伸びてる様な燈籠は使いません。
「とうくん、とうくん」
「ん?」
突然スゥが席を立った。
そして身体で、何かを表す。
「えっと…T?」
何で急に始めたのか意図は分からないけど
「O?」
「U」
あー、察し。
3文字目を終えた直後急に機敏になるスゥ。
KUN!
「TOUKUN!」
ちっがーう!それじゃなーい!望んでも無いけどそれじゃない感がぱない!
ってかNできてないし!口で言ってるし!
明らかに3文字目まで俺を含めた3人は、なるほどーってなってたじゃん!
「ふふふー(`・ω・´)
そして何故どや顔なのか。
小さく胸を張りそのまま、何事も無かったかの様にスゥは席に戻った。
「さて、落ち着いたところでまず改めて皆で自己紹介しよっか」
「はーい」
「では先ず私から」
ボーイッシュな格好にポニーテールをながら、奈菜さんが席を立つ。
「えーこほん、改めて初めまして!星光大学2年、
「おぅ、奈菜さん大学生さんだったんですね」
「うんうん」
「星光大学って明星から1時間半位かからない?」
「それ俺も思いました」
「今は、ちょっと色々あって実家のある明星に帰って来てるんだ~普段は明星住みだよ~」
てへーと可愛らしい仕草を取ると奈菜さんは再び自己紹介を始めた。
「趣味は、読書とかスポーツ、楽しみはレア泥金策」
3次元に生きてるなーと思ったら最後で全て帳消しになったぞ。
「多分、一番年上になっちゃうけど…年齢は気にしないで仲良くしてね!」
パチパチパチとお辞儀をする奈菜さんに拍手が飛んだ。
「そしたら次は、あたしね」
2番手の紗癒さんが席を立つ。
「明星高校2年
同期キタ━(゚∀゚)━!
いや、というより…本名公開された時の聞き覚えはやはり間違っていなかった。
明光高校、白鷺 紗癒 俺の学校の茶道部副部長だ。本当世間って狭いね…
「EFOではクレアリムってキャラでエア・イグレットとランド・イグレットを分けてやってます」
「趣味は、EFOと茶道」
「へー茶道してるんだね~」
「家柄の絡みで小さい頃からやらされてただけだけどね」
少し照れくさそうに言う。
けど、茶道って慣れても難しいって聞くし、凄い事だと思う。
「あと…あまり人と絡んだりしないから、勘違いされがちだけど」
「その…別に怒ってるわけじゃ無いから…よろしく」
>上手にデレマシター<
ツンデレって良いよね、うん。
ってか、典型的なソロプレイヤーの有様と言うか何というか。
コミュ障とは言う程では無いんだけど、ネットでは普通に話せてリアルでも話せはするんだけどリアルだと普通に話してる言葉が、他の人から見たら嫌そうに捉えられてるとか。
あるあるだよね。
「ほら、次あんたよ」
紗癒さんから指名が入った。
「おうぃぇ」
言われるまま、席を立とうとした時だった。
「う?」
何か右腕に、白い女の子がおまけでついてきた。
いや、ついて来たというよりシガミツイテル
「あの、ましろ?俺の自己紹介だから」
(´゚д゚`)ハッと察した様にスゥが右腕から離れる。
いや、抱き着かれてて悪い気はしないんだけどね。
「えっと…」
やばい…いざ本番になると…考えてた言葉が頭から抜ける。
けど何故かさ?右側からさ?異常な程の期待の眼差しと言うかキラキラした目の持ち主がですね?見つめてくるんですよ。
「・.*:+:(*・ω・*):+:*.・」
畜生!これは…やるっきゃない!
「明星高校2年の叶植 刀です!」
「EFOではクロムってキャラでアルカ・フォシルをやってます!」
「あんた、本当にアルカ・フォシルなのね…」
「昨日もそうでしたけど、そんなおかしいですかね」
「私もマゾ過ぎて、やる人が少ないって有名だから少しびっくりはしてるかな~」
そんなマゾいかなぁ…他と変わらない気はするけど…
えっと。
「趣味は、低確率レア装備を掘ったりすることです!」
(`・ω・)←スゥの現在
↓
「後は、魔法を受けて武具の魔法属性を上げたりすることも好きです!」
↓
(;・∀・)
↓
「他にもいっぱいあるんですけど、一押しと言ったら大量のMOBを釣ってカウンターを取ってDPSの特殊ボーナスを稼ぐのも…!」
↓
(´・ω・`)…
「あんた、生粋のマゾね」
あれ?
「盾職の私でも中々言えないなーw」
おかしいぞ
「(`-ω-)とうくんはドM」
何か物凄い皆に引かれてる!
「いやいや、EFOだと皆そんな感じじゃないですか?」
「どんな特殊性癖よ」
「ほら、フリューゲルだってカウンター火力スキル多いですよね!」
「確かにあるけど・・・さすがに一応盾職だから火力は出ないよー」
「まず火力職でカウンター攻めってスタイルが珍しいと思うわ…」
「けど、スゥは俺のスタイルに何も言いませんよ?…なぁスゥ?」
「(`-ω-)しゃーらっぷ!」
「黙れ言われた!?」
「今のはスゥちゃんが正しいね…w」
「いや…けどアルカ・フォシルだとステ係数が他より低いんでそういう戦い方になるんですよ」
本当に、アルカ・フォシルは多彩な剣技の戦闘スタイルが出来るんだけどその反面で体力とか基礎ステが他より伸びにくいからさ。
他のランクアップジョブの最上位がカンストLvの150でHP30k位あるとして…150にしたフォシルは20kですよ…?
「だからまずアルカ・フォシルを使ってるのがマゾだって言ってんのよ!」
うわぁぁぁぁぁぁぁ!?!?
当たり前だけど今まで思ってても口に出来ない様な事言われた!
お、俺のハートにジャストミートだじぇ…きつい意味で。
「アルカ・フォシルする為に強化とかでお財布が火を噴いた人が多いって聞くよね…」
無課金でやると地雷だって言われる様な職業ですから。
なんとこの職業!今強くなるならお値段なんと○十万円!
ジャ〇ネットもびっくり、何か言ってて悲しくなってきた。
「先生、俺のライフもうゼロです」
マイナス表記が入って良い位のダメージっす。
哀れみの目の集中砲火がでもう目すら合わせられない。
「まぁドM思考なのは、置いておくにしても剣を8割集めてるのに変わりないし」
「そこは称賛するべきだね!」
フォローがもうフォローじゃないよ!
集めた事がドM思考にしか捉えられないよ!
「とうくん、とうくん」
「うぅ…」
落込む俺に、スゥが背中をトントンと叩き慰める。
「これでも飲むのです」
差し出されたのは…
タバスコ。
なるほど…冷めた俺の心に熱くなれ…そう言う事か…
「(`・ω・)b」
ただね…
「スゥ…タバスコは飲みものzy…」
「(`Д´*)っましろじゃぁぁぁぁ」
突っ込む間もなく、名前に不服なスゥからストレートがジャストミート。
「うぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
きれーーいに鳩尾を狙ってくるんです。
「ま…しろ…」
俺は、真っ白に燃え尽きたぜ。
あ、駄洒落じゃないよ。
「な…何はともあれよろしくお願いします…」
鳩尾のダメージを抱えながら、軽くお辞儀をする。
「うんうん」
「まぁお金の為にもササッとサリシクイネ終わらせないとね」
「(=゚ω゚)b」
おかしいな、まだ数分しか経ってないのにダメージの方が大きい。
だけど、ダメージを気にしてくれてるのか終わった後は後でスゥが腹部をよしよしってしてくれてる。
飴と鞭ってこういう事言うんだろうね。
「じゃぁ次、えっとましろ…ちゃん?」
「あい」
ましろがまともに喋るの初めて聞く気がする。
小柄な体が椅子の横に並ぶと、ましろは小さく会釈をした。
「明星高校2年、
「あれ、ましろも同級生なのか」
「うん」
「ってか、知り合った過半数が同じ学校って何なのよ」
うん、ほんとそれ。
「けど、前年に進級出来なかったから本当は3年生」
あー…
「あー…えっと…なんかごめん」
「ううん、病気で学校に行けなかったの」
同情するのは失礼だけど…普通に重い話だった…
「今は治ったの?」
「うんうん」
「だから実際とうくんと白鷺さんと学力は変わらない」
「EFOではスゥって名前でエインセルしてます」
「趣味は、EFO・とうくん」
「なるほどな~……ふぁ!?」
「ほほう…」
「へぇ…」
驚く俺を他所に、怪訝そうな顔とにやにやした顔が…こちらを…
どういうことだってばよ…
いや、ほんとどういうことだってばよ?むしろ趣味、俺って何?
五寸釘でも刺されるのかな。
「人に馴染むの得意じゃないから…色々呼んでくれると嬉しいです」
「うんうん、サリシクイネもそうだけどEFOでもリアルでも一緒にあそぼ~」
「仕方ないわね…」
「お、おういえ」
手前の出来事が強すぎて言葉が出てきません。
「ところで、ましろちゃん?」
「?」
何か…不穏な気配って当たるもので。
「とうくんとはどう言う関係なの~?」
デスヨネー ソンナマエフリシタラ ソウナルヨネー
にひひ~と妖艶な笑みを浮かべながら奈菜さんが問う。
「きゅ、急にどうしたんですか奈菜さん」
「ほらっ、趣味とうくんって言うくらいじゃない?アピール凄いから何でだろうな~って」
「い、嫌だな~!俺とましろはEFOの友…」
「恋人ですっ」
(´゚д゚`)…
何かの聞き間違いだよね。
「えー、んふん EFOの友だ…」
「恋人ですっ」
(´・ω・`)…??
「ふぁぁぁぁぁ!?!?」
「ほっほぅ…w」
「あんたたち出来てたの…?いや、何となくそんな気はしたけど…」
いや、そんな気は俺は微塵もしてませんでしたよ。えぇ。
「いやいやいや、俺たちはつい最近EFOの中で知り合って一緒に狩…」
「とうくん…?」
「え?」
ウルウルした瞳を向けながら「違うの?」的な目を向けてくる。
いや…こんなん卑怯だろ…
こんなん、そんなことならへんやろ~…
なっとるやろがい!!ってなる奴じゃん。
いや、分かると思うけど俺が一番困ってるんだよ!!
「いや…えっと…あの…」
「とうくん…?」
うっ…
「か、彼女です…」
「(*ノ∀`*)エヘヘ」
「よっわw」
「あはははwやったね!スゥちゃん」
絶対間違いなく、この2人分かって誘導してた!
まぁ掌で転がされるまま気が付けばスゥがいや、ましろが彼女になってました。
おい、ハッピーエンドだぞ泣けよ。
魔性の女ってこういう事を言うんだろうか?もう分からないや
「あははは…」
「こんな私ですが、よろしくお願いします」
小さくぺこっと頭を下げるましろに拍手が飛ぶ。
「とりあえず、ざっとだけど皆の自己紹介が済んだね」
「俺だけ物凄いダメージなんですが、ライフゼロなんですが」
「あんたに関しては、どんまいとしか言いようがないわ」
「とうくんどんまい」
嬉しい筈なのに、切ない。
「けど良かったよ~皆、思ったまんまの人だったし」
「皆、この辺に住んでる学生ってところもびっくりだけどね」
「うんうん」
「正直、俺はもしかしたらネカマが来るんじゃないかと」
スゥが俺の右腕にしがみ付く様にひっついて来る。
「まさか、本当に皆女性だとは・・・信じてなかったわけじゃ無いんですけど」
「とうくんは絶対男だと思ってた」
しがみ付いたスゥから断言的な言葉がかけられる。
「俺が女だったらどうするんだ」
「とうくんが女でも私は、とうくん好きだよ」
何か物凄い危ない事言ってますよこの子、いや最近はそっちの方が需要が…?!
「けど、男だったから結果的に良かった」
「そう、ソウダネ」
「あんたたち、ノロケは他所でやりなさいよ」
紗癒さん!もっと突っ込んで!俺じゃもうどうしようも無いんだ!
「けど、スゥちゃんのいう事もわかるなぁ~」
「え?」
「私も、可愛い女の子とかいると、むぎゅーってしたくなるもん」
幸せそうにニコニコしながら体を捩って、奈菜さんが言った。
お…おう。
「そ、そうなんですね」
「あたしも分からなくはないわね」
この人も同類だったーーーーー!!
百合パラダイスですよ、略して百合パ。
あ、俺はリュ〇クが一番好きです。
「けど、スゥちゃんの言ってるとうくん好きって言うのはまた別だと思うけど」
「う…?そうなんです?」
「多分スゥちゃんの好きって、とうくんが優しいからとか信頼とか色々な物をひっくるめた上での好きだと思うの」
「うんうん」
「ネット恋愛とかって、最初から愛を送って気に喰わないとまた切って別の人にみたいな、要は内面を見てない人がネットじゃ多いからね」
出会い厨とかよく聞くもんなぁ。
実際、3・4割は出会い厨らしいから皆気を付けようね。
「だから、スゥちゃんの好きって言うのは、とうくんの事を知ってる上での好きだと思うよ」
「確かに、あたしも今日初めて会ったわけだけど嫌いになるようなタイプではないわね」
「紗癒さん…」
「世の中、嫌いになろうと思えばいくらでもなれるけど、嫌いになろうと思ってもなれない様な相手っていると思うの」
「それが俺…と?」
「まぁそういうことよね」
「私も、とうくんは接してて悪い感じはしないし」
「スゥちゃんもそこが好きなんだと思うよ」
何か凄く胸が熱いというか、美女3人に囲まれてハーレムで彼女が突如できて、しかも俺の評価をされてるという。
何なんだこのオフ会!
けど何だ。
悪い気はしない、ダメージの方が大きいけどね
「俺も正直、ここにいるメンバーが皆良い人で本当に安心してます」
「ネトゲオフ会、何てどうせ性別詐称してる人ばかりだと思ってたので…」
「こんな俺ですが、よろしくお願いします」
「よろしくね!」
「ちゃんと役に立ちなさいよ?」
「(*'ω'*)うんうん」
こうして俺の人生初のオフ会は幕を閉じた。
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