エピローグ
俺はまたも目覚める事ができた。そして、別の世界にいるとわかった。
左腕には点滴がされていて、心拍数を測る機械がベッドの隣に置いてある。頭が固定されていて動けなかった。俺は声でベッドの脇の丸椅子に座っている人に合図した。
「母さん……」
母親は俺の声に気付いて驚いて立ち上がった。
「隆!」
俺は自分の本当の名前を懐かしく思った。母親は俺が目覚めた事を泣きながら喜んだ。俺はその様子から、自分が自殺を図った直後に戻ってきたのだと理解した。
あの時、真下の生垣がクッションになって、俺は即死を免れたらしい。俺が屋上から落ちてきた時、部活中だった生徒達が部活を中断して救急車を呼んでくれた。すぐ病院に搬送された俺は緊急外来ですぐに蘇生措置が行われ、後は意識を取り戻すまで待つしかないというところまでいった。
そして、意識を取り戻したというわけだ。
俺はサウロス王子だった時の事を思った。深夜に勝手に城を出て、誰にも見られず落馬事故を起こしたサウロスはきっと今度こそ死んだだろう。そうなると、あの国は跡取り息子を失ったことになる。妃は国に帰るしかない。だけど、もう俺にできることはない。
俺は県外の高校に編入する事になり、新しい生活をスタートさせた。今度は失敗しないと心に決めていた。今度こそ、俺は山内隆として、他人と良好に関わり合おうと決意した。
異世界に転生しても俺は孤独なままだった 伊豆 可未名 @3kura10nuts
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