第4話 奇襲

「じゃ、いいよ、真理から言ってよ。」


彼女は少しはにかみ、恥ずかしそうにしている。

きっと彼女はこう言うだろう。


「実は前から健太のことが私好きだったの…。」



そして僕は、満面の笑みで彼女の瞳を見つめてこう言うんだ。


「実は、僕も前から真理のことが好きだったんだ。」



もしかしたら初キスなんてこともあるかも知れない。


「じゃ、私から言うね!」


 彼女がやさしく微笑んだ。どんなにかこの瞬間を夢見たことだろう。

 少年は目を閉じた。世界には二人しかいなく、ここが宇宙の中心に思えた。

 もう何も思い残すことはない。

 少年は目を閉じて、美しい彼女の声を一言も聞き逃さないように集中した。


「実は…彼氏ができたんだ。バイト先の人で…。きっと健太なら喜んでくれると思って。ほら、私たち親友じゃない?最初に健太に伝えようと思ってたんだ。」



少女は無邪気に残酷に微笑んだ。


「で、健太の用事は?」




「え?いやっ、その…。」



少年の命を賭けた奇襲は失敗に終わった。

敗因は相手方の奇襲だった。


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奇襲 ぺるめるだむす @prpr

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