第3話 白兵戦

「ピーンポーン」

「はぁい、どなたですか?」


「あ、あ、あの僕…、同じクラスの…」

「あ、はいはい、待ってね。真理!お友達よ!真理!」


 玄関のドアが開き、ショートカットのかわいい少女が出てきた。

 夏の夜の薄闇の中、彼女は美しかった。


「実は言いたいことがあるんだ。やっぱり、どうしても伝えたくて。」

「ほんとに?急にどうしたの?でも、私も。ぜひ、健太には伝えておきたくて。」


 少年の胸の鼓動があがった。まるで16ビートだ。


「じゃ、君から先でいいや、なに?」

「え?健太でいいよ、どうしたの?」

「いやいや、真理から先でいいよ。」


 こんなやりとりを10分もしただろうか?少年には戦いの勝利が見えかけている。


 彼は思った。きっと自分が伝えようとしていることと、彼女も同じこと思っているに違いない。よく学校帰りは一緒になったし、席も隣だ。何よりも、他のクラスメイトの男の誰よりも彼女と僕は仲が良いんだから…。


 少年は勝利を確信していた。

 彼の命を賭けた奇襲は成功したのだ。

 そして彼女が口を開いた。

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