22
「はぁ…」
どうしよう。
認めてしまったということは、卓人くんを恋の対象として見ることになるということ。
自分が自分を信じられない。
まさか、犯罪者と深く関わるようになって、異性として意識するような距離感になるなんて。
でも、もういまさら戻れない。
なぜなら、卓人くんを見ていると胸が痛く高鳴るようになってしまったからだ。
私はもう彼を知ってしまったのだ。
彼を知らずに生きていた頃に戻ることなんて、もう出来ない。
無駄だと思いながらも、私は少しでも彼の心を側で支えてやりたい。
もう、私の見る目も以前までとは違うのだ。卓人くんが好きで人殺しをしているわけじゃないことに気づいてしまったから。
悲しみを埋められるように。人を殺さなくていいように。
あなたの側にいたい。願うことならずっと。
この歳になって初恋みたいで恥ずかしいけれど、本気だった。
だからこそ、彼にはこの思いをバレないように隠しておこうと決めた。
卓人くんにとって、不安要素は増やすべきではないのだ。
「…未さん…里未さん。里未さん!大丈夫?顔…赤いよ?熱は無いよね。あまりに赤くなるからこっちまでつられてしまうよ…」
「へ?…あ!ごめんね、ちょっとボンヤリしてた…気にしないで」
バレないようにって思ったばかりなのに、私のバカ…。
バチンッ
「きゃあ!」
なに?室内が突然、真っ暗になった。
視界が暗闇に支配され、私の心は一気に恐怖感が満たされていった。
暗い…怖い…!
度胸があるって卓人くんに思われてるみたいだったけど、暗所だけはダメだった。
幼い頃のトラウマによるものだった。
「里未さん」
声が耳ともから聞こえた。
卓人くん?どこ?
不安になりかけていた私を卓人は腕を掴み引き寄せた。
「暗いの怖いんだね。…少し安心したよ。女の子なのに怖いもの知らずかと思ってたけど、苦手なものが里未さんにもあったんだ」
卓人の口調は優しく落ち着いたものだった。
さらに背中に添えられた手の感触に動揺する。
暗くて見えなくてもそれだけで、抱き寄せられていることが分かる。
私が混乱している間にも卓人くんは冷静で、私のことなんか気にしてもいなかった。
「ブレーカーが落ちたかな。ブレーカー見に行くから里未さんも一緒に来るよね?一人になるの、嫌でしょ。足元が危ないから抱き上げちゃうね」
え?
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