チームメイトと初任務

 オレ、日宮未散は昨晩親父が作った料理を妙な薬が入っているとは知らずに食べてしまい、朝起きたら女体化と引き換えに超能力を手に入れていた。

 こんなふうになってしまった以上普段通りの生活を送るわけにも行かずオレは渋々手紙と一緒に入っていた地図を元に超能力者養成学校私立桜ノ宮女学院へと足を運んだ。


「ここが……桜ノ宮女学院」


 勢いで来ちゃったけどやっぱ場違い感半端ねぇな……。マジで超能力者って女子しかいねーのかよ……。


「お待ちしておりました、未散様」


 あたりを見回していると突然誰かに話しかけられた。声に振り向き正面を向くとそこにはメイド服姿の女性が立っていた。


「本日案内を任されたエヴァ・シュリンフォードです。さぁ、こちらへ。学園長が待っています」



 エヴァさんに学園長室まで案内されることになった。周りの視線がオレに集中している。もしかして、男だってバレてるとか!?


「大丈夫です。あなたの正体を知っているのは私と学園長だけですから」


「そ、そうなんですか……」


 この人、オレの心でも読まれているのだろうか。


「私の能力は、人の心の声が聞こえるというものなので。テレパシーというやつですね」

「なるほど」


 実に便利な能力だ。まぁ、オレも人の事言えないけどな……。

 それにしてもやはりこの大量の視線は気になる。


「皆さん、あなたに興味津々なのですよ。なにせ、この季節に急な転入生、しかも綺麗な髪に肌、その容姿。例え同性でも気は惹かれますよ。男性なんてほっとかないでしょう」


 それはホントに辞めて欲しい……。


 そうこうしているうちに後者の三階、学園長室に着いた。


「どうぞ、お入りください」


 促され、恐る恐る中へと入る。


「失礼しまーす」


 中へ入り中央辺りまで行くと背を向けていた椅子がゆっくりとこちらに向き直った。そしてそこに居たのは……。


「やぁ!よく来たね!待ってたよ〜」

「こど……も?」

「学園長はあの見た目ですが、とっくに成人しているれっきとした大人です。大体あなたのお父様くらいの歳かと」

「なん……だと!?」


 この子が親父と同じ歳!?


「にゃは」


 こちらにウインクしてくる。どう見ても子供にしか見えない。


「君も同じようなものだろう、みちるん?」

「みちるん?もしかして……オレの事?」

「他に誰がいるの?」


 それはそうだが……。呼び方まで女子っぽいのは。


「みちるんが超能力を手にする代わりに女の子になったの対してわたしは超能力の代償に成長しない体になったってとこかにゃ」


「普通の女子に超能力が発現するのにも代償とかあるのか?普通女の子にしか宿らない超能力を得るためにオレは女になったってとこだろうけど」


「わたしのは例外かな。みちるんほどでは無いけど。わたしの場合、手にした力が強すぎた故の代償かな」

「そんなに強いのか?」

「おや?興味ありかにゃ?1戦やっちゃう?」


 やる気満々だった学園長だが、急に静かになった。何故だろう。不思議だ。


「まだ名乗ってなかったね。わたしがここの学園長、白星暁音しらほしあきねだよ。日宮未散くん、君の転入を歓迎する。ようこそ、私立桜ノ宮女学院へ!……あっ、わたしの事は暁音ちゃんとでも呼んでね」


 ◇


「ここが今日からあなたが過ごすことになる101号室です」


 学園長……暁音ちゃんに挨拶を済ませ、校舎の隣に位置する寮へと案内され部屋の前までやってきた。

 俺はその先にあるものを何も考えずドアを開けた。


「あ、そう言えば今日からだっけ。ちょっと待ってね、今服きちゃうから―」


 俺はそーっとドアを閉めた。


「ひひ一人部屋じゃないんですか!?それに、はだはだ裸って!」

「言ってませんでしたっけ、この寮は通常2人部屋ですよ。それにあなたも今は女の子なのですから問題ないかと」

「そういう問題じゃ……」


「あ、いたいた。そんなとこで突っ立ってないで入りなよ」


 服ってTシャツ来ただけじゃないか……。



「ごめんね、初っ端だらしない姿見せちゃって」

「い、いえ」

「私は水瀬絵梨みなせえり。よろしくね」

「あ、えっと日宮……未散です」


 気にしてはいけないけど気になってしまう……。どうしても目が行ってしまう、下着を付けていないので余計に透けて……。


「ん?どこ見てるの?気になるの?未散ってそういうタイプ?ふーん、見たい?」

「え、絵梨さん!?」

「さんなんて他人行儀じゃなくていいのに。女同士なんだから」


 そういう問題じゃ……!てか、オレ男だし!


 バタン!


「えりりん、遊びに来たで!……その子はは誰や?まさか……浮気!?わたしだけだと思っとったのに、およよ……」

「紛らわしい言い方するんじゃない!」

「……えりりんも隅に置けない」

「美柑まで……てかあんたどこから入ったのよ」


 何やら急に騒がしくなった。取り敢えず危機は脱した……のか?


「騒がしくてごめんね。私たち同じチームなの。こっちのうるさいのが干宮星来ほしみやせら

「よろしゅう!」

「で、こっちが吹雪美柑ふぶきみかん

「……よろしく」


 なるほど。何となくわかった。


「オレは……日宮未散……よろしく」

「オレ?」


 やば、まずったか?正体ばれたんじゃ。


「オレっ娘とか最高やん!この容姿でオレっ娘とか萌えやで!」

「あー、気にしないでいいわよ。そういう子だから。改めてよろしくね未散」

「……みちるん、よろしく」

「よろ……しく」


 バレなかった、のか?てか、みちるんて……。


「後、あなたも私たちのチームに入るはずよ。まぁ、それは明日かな―」


 ウーーーー!

『第3地区に無魔出現!特務チームは直ちに出動せよ!』


「今日これからみたいね」

「特務チーム?」

「そう、無魔の撃破とかに優先的に出動する特別任務チーム、それが私たち特務チームって訳。さ、モタモタしてらんないし、行くよ!」

「え?ちょ、ちょっとまっ……あぁぁぁぁぁぁぁ!」


 オレの言葉は届かずどこからともなく現れた鎖に縛られ、学園の外へと連れ出された。



「とうちゃーく」

「し、死ぬかと思った……はぁ、はぁ」

「もう、だらしないなぁ。まぁ、未散は初めてだしその辺で見てて。行くよみんな」


どうやら通信機で美柑さんや星来さんとコンタクトを取ってるみたいだ。

そこからは見事な連携だった。どこからともなく放たれた銃弾で体制を崩した無魔を絵梨さんが鎖で絡め取り殲滅した。


「終わった終わった。さぁ、帰りましょ」

「危ない!」


絵梨さんの背後に向かって放たれた攻撃によく分からず咄嗟に反応していた。


「はぁぁぁぁぁ!」


そしてその勢いのまま跳ね返した。


「ありがとう。助かったわ。あなたの超能力ってサイコキネシスなのね」

「そうみたい……。オレも咄嗟でよく分からなかったけど。それより大丈夫!?怪我とかない?」

「おかげさまで無傷よ」

「良かった……」

「それより一体どこから……。まぁいいわ。とりあえず帰って報告ね。シャワーも浴びたいし」



木陰から除くフードを被った人影がひとつあった。


「サイコキネシス……。一応気をつけといた方がいいわね。姫様に伝えておきましょう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

性転ESP 十六夜 煌人 @end

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ