性転ESP
十六夜 煌人
女体化と超能力
「待ちなさい!」
闇夜の中、2人の少女が宙を翔けている。黒いローブに身を包んだ小柄な少女をかなり目立つ金色の髪をした碧眼の少女が追っているようだ。
『待てと言って待つバカはいないで。まぁ、ええ。敵との距離、500。もうちょいで美柑の射程圏内や。それまで頑張ってや』
「分かってるわよ!……美柑、今の聞いてた?」
『…こちら美柑。…いつでもOK』
黒い少女に照準を定め、2kmくらい離れた所にあるビルで綺麗な銀髪の少女が待機する。
『残り5m、4、3、2、1、今や!』
「束縛の鎖
バインド・チェイン
!」
何処からともなく現れた金色の鎖が黒い少女に絡みつき動きを止める。
「…ナイス、えりりん。…照準OK、座標固定。……発射!」
銃弾がミサイルのような威力を持ち、 黒い少女に直撃する。
「命中!これでやったの?ていうか、えりりんって呼ばないでって何度言ったらわかるの!?」
夜の闇に静寂が満ちる。着弾地点には煙が舞っている。
「……いや、逃げられた、みたい」
徐々に煙が晴れていくと、そこには何者の姿もなかった。どうやらギリギリのところで鎖を抜け出したようだ。
『またしても逃してもうたか……。本当、すばしっこい奴やな〜』
「そうね。星来の計算も美柑の正確さもバッチリだったのに……」
『とりあえず、作戦会議やて。はづはづがよんどるで』
「了解、美柑も連れて戻る」
―――――
近くの電波塔に5人のフードを被った少女達がマントをはためかせながら立っている。
「ふふふ、まだやられるわけには行かないの。この世界は私達、ナイトメアが支配するわ!」
少女達は強風が吹くのと同時にその場から姿を消した。
☆ ☆ ☆
俺の名前は日宮
。ごく普通の男子高校生だ。1つコンプレックスをあげると、男なのに女みたいな名前だということ。
小学校の時なんかは、女みたいな名前の上見た目も女みたいだったため、よくイジメられた。俺の両親はなんでこんな名前を付けたのだろうか?
「ただいまー」
「おかえり」
家の中に入ると親父が返答してきた。いつもなら何も帰ってこないのだが…。ちなみに母親は俺を産んですぐに亡くなったらしい。
父親がいつも家にいる理由は良く分からないが、何やら部屋で薬品の研究をしているとかなんとか、詳しいことは良く分からない。そんな親父が今日に限って返事をするとはどういう風の吹き回しなのだろうか。
疑問に思いながら部屋に荷物を置いて戻ってくる。すると、リビングにはすでに夕飯が並んでいた。
「これ、親父がやったのか?」
「あぁ」
なんだと!?今まで家事のかの字もしなかった親父が夕飯を作っただと!?一体どういう事なんだ!?怪しすぎる……。
「さぁ、食え」
「あ、あぁ。い、いただきます」
これは明らかにおかしい。親父が積極的にやるのは研究に関することだけだ。となると、何か入ってるのでは……。
「何だ、疑ってんのか?俺が何か入れたんじゃないかって」
「疑いもするだろう!研究以外全く興味を示さず、家事の一つもしてこなかった親父がこんなのいきなり作るとかどうかしてるぜ!!」
「酷い言われようだな」
別に酷くはない。全て事実なのだから。母さんも良くこんな親父を選んだものだな。
「父さんも色々あるんだよ。今日はたまたま手があいたから作って見ただけだ。こう見えても料理には自信あるんだぜ。さぁ、食え食え」
渋々食べることにした。一つ慎重に口の中に運ぶ。
…………
「うまっ!」
「だろ?」
何だよ、親父の奴やれば出来るんじゃねーか。なんか泣けてきた。
「ごちそうさまでした。……ふぅ、一休みして風呂でも入るか」
夕飯を食い終わり、文字通り一休み。親父は食後早々部屋にこもってしまった。まぁ、あれだけでもちょっとは評価されるかな。
10分程休んで風呂に入る。体をあら洗い、湯船に浸かると一気に疲れが取れるようだ。
「ふぁーあ、なんか急に眠くなってきたな。あがったらすぐ寝るか」
風呂で眠くなるのはいつもの事だ。風呂場から出ると何だか急に目眩がする。逆上せたのだろうか。
ふらつきながらも着替え、部屋へと自力で行く。頭痛がしたり、気持ち悪くなったりしてきた。俺はそのままベッドに直行した。
体もやけに熱い。逆上せたのなら休めばすぐ直るだろう。そう思い、ベッドに倒れ込んで目を瞑る。眠気もあったせいか、目を瞑るとすぐに眠りに落ちた。
☆ ☆ ☆
「うぅん……」
カーテンの隙間を抜け、部屋に陽光が差し込むのを合図に目を覚ます。
「ふぁ〜あ、まだちょっとダルいな。とりあえず、着替えるか」
布団から出て寝間着を脱ぐ。上を脱ぐ時に底知れぬ違和感を感じ自分の身体を見下ろす。すると、2つのおおきな巨峰が視界を塞いでいた。
鏡を見てみるとそこには絶世の美少女が映っていた。体を色々動かしてみたり、自分の体と見比べたりする。
「これ、オレなのかーーーーー!?」
それもそうだ。今までなかった2つの胸の膨らみ。長くしなやかに伸びた髪。綺麗に整った端整な顔立ち。白く細い華奢な体。全てが驚愕だった。
今し方信じられず、Cカップくらいはあるであろう2つの胸の膨らみに触れる。
「……柔らかい」
って、何やってんだオレは!!今はそれどころじゃなくてこの状況を把握しないと……!
「てことは……」
ここまで来ると確かめずに入られない。男なら誰でもついてるはずのアレを確認しようと下半身に手を伸ばす。
「………な、い」
あるはずのものが無くて無いはずのものがある。これは確実に女になってしまったという事なのか?親父なら何か知ってるかも知れねぇー!
オレは至急親父の部屋に向かう。だが、そこに親父はいなかった。
「くそっ、肝心な時にいやがらねぇ!」
家中を隈なく探すが見つからなかった。
「動き回って腹へったな。まだ朝飯食ってなかったわ」
親父のことは諦めてリビングへと向かう。テーブルの上には手紙と女子制服らしいものが置いてあった。手紙を読んでみるとこう書いてあった。
『お前には被検体となってもらった。昨晩の飯にとある薬品を入れといたんだ。今頃、体の変化に驚いてるか、新しい体で弄んでいる事だろうよ』
「やっぱ、親父が原因かよ!!……てか、弄ぶとか…そんなの、す、するわけないだろ!」
『新しい学校はもう用意してある。ラドミラだ』
あそこって確か、超能力者養成機関じゃなかったけ?なんでそんなところ……。
『お前は女体化を代償に超能力者になった。制服はそこに置いてあるのを着てくれ。その他は寮の方へ送っておいたから。俺は暫く海外に行く事になったから後は頑張れよ』
親父のやつ、勝手過ぎるだろ!テーブルの上には律儀に制服が畳んで置いてあった。しかも下着付きで……。制服はいいが、下着はどこで手に入れたんだ…。それに超能力者ってどういう事だよ。
「ツッコミどころは山程あるが、ひとまず飯にしよう」
そう考え、食器棚に手を伸ばすとひとりでに戸が開き、皿や茶碗などが出てくる。
「え、これどういうこと?」
試しにコンロに向けて手を翳し「火よ、つけ」と念じてみると何も触れずにガスコンロの火が点いた。
「え、マジ……?これが、超能力?オレ、本当に超能力者になっちまったのか!?」
中々信じられず他にも試すがやはり、オレが念じるとその通りに物が動いた。
「うそ、だろ……」
女になった挙句、超能力者になるとか……。嫌が応でも認めざるを得なかった。
「オレ、これからどうなんだーーーーーーーーー!?」
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