第7話
こうして可哀想に。
悪魔は自分が死んだのにも気づかないうちに死んでいきました。
「神様、これではあまりに可哀想です」
「彼にも救いを」
天使達が口々に言うので神様は考えました。そして大きな手で死んだ悪魔をつまみ上げられました。
そして悪魔に言ったのです。
『 おまえはあの少女と共にねむれ。そして背の高い木になって世界中からお前の撒いた鏡の欠片を空気ごと吸い込んで回収しなさい。全部回収できたなら、お前をまた、今度は人間として生まれ変わらせてやろう。それまでずっとお前のそばにいるのが少女の罰だ 』
ほとんど意識のないまま悪魔はそれを聞いて思いました。
もしも許されるなら、今度生まれるなら、人間でもそうでなくても別にいい。
美しく映るわけでもも醜く映るわけでもない。ただ本当の鏡になりたい。
そしてそれは、神との間に、確かに約束されたのでした。
そういうわけで、ヤヨイと呼ばれていた女性は、今は学校とも病院とも離れた広い霊園に眠っています。
その平たい墓石の上にある不思議な長身の 木も伐られることなく寄り添っています。
時おり、若い男女が二組、その墓の前で手を会わせに来ますが、しかし誰に見えるでしょう。
誰が植えてもいない墓場の木に上って遊ぶ、小さな女の子の透明な姿を。
それを乗せて嬉しそうに笑う、その木の姿を。
見えているのは明けては暮れる日々たち以外にきっと、ないでしょうね。
鏡を飲んだ男 おそば @suika3
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