第21話 かみさま家族、大集合!

 あれから宇雅は、芽衣の働く店に通い詰めていた。


「あっ! 特等席、今日は取られてる~」


宇雅の言うその特等席には、既に家族連れの客が座っていた。本人曰く、そこからが一番芽衣の姿が眺めやすいという。


「ちぇっ、」

軽く舌打ちをしながらその席を通り過ぎようとした宇雅だったが、横から飛び出てきた何者かの腕に行く手を遮られた。


「うわっ!?」

「ほほぅ、宇雅よ。君もここに来ていたのか」



未だ腕を掴まれたままの宇雅がソロリと顔を上げると、そこには見知った顔の人物。








「義父上!? 何故ここに……」


そこにいたのは宇雅の義父である須佐ノ男。そして……


「あ? コイツがあの、宇雅?」

見知らぬ男に名を呼ばれ、宇雅はそちらを見る。


褐色の肌に赤茶色の髪、その耳にはいくつもピアスを付けている。そう、あのメイを怯えさせた例の‟派手男”だ。



「……義父上、こちらは?」

「ああ、これは私の――」

「お待たせしましたー!」


そこへ会話を遮るように現れたのは、待ち望んでいた芽衣だった。


「芽衣~!!」

なんとも嬉しそうな声を上げて、宇雅は男の隣に座る。


「あ゛!? 隣に座んな!」

「……あれ? 宇雅さん、来てたの? 武彦と知り合い?」


芽衣はそう言いながら、注文の品をテキパキとテーブルに並べていく。

一方宇雅は武彦と呼ばれた男の方を振り返ると、黙ってろ、とでも言うように睨みつけた。


「僕いつものパンケーキね」

「……」

不機嫌そうな武彦を不思議そうに見つめ、芽衣は再び厨房へと消えた。











「……で、これは何ですか?義父上」


これ、と指さされた武彦は顔を真っ赤にさせて宇雅を睨む。

この二人は初対面であったが、互いに初めて会う気がしなかった。妙な親近感を覚えながら、宇雅は再び隣に座る男を見つめた。


「これは私の息子だよ。武彦だ」

「息子!?」






息子――、そう言われればどことなく雰囲気がこの義父に似ていた。褐色の肌に整った顔、少し派手ではあるがなかなかの美形であった。


「ということは……芽衣の、」

わなわなと震える宇雅を睨みつつ武彦は答えた。

「アイツの兄だ。……と言っても‟今の”、じゃないがな」


 

 須佐ノ男の息子、武彦。彼は確かに現世ここに存在する、人間だった。だが生まれる前の記憶――つまり前世の記憶――が、彼にはあった。自分が誰なのか、どうしてここにいるのか、彼は生まれながらにしてその答えを知っていた。

芽衣とは幼馴染の関係にあるようで、互いの家を行き来する程の仲だ。


「と、いうわけだ。以後、仲良くするように」

「以後?」


宇雅が不思議そうに尋ねると、須佐ノ男はギラリとした目で言った。


「可愛い娘をどこぞの馬の骨なんかにやってたまるか」


先程とは違い、黒い笑みを浮かべたこの義父に宇雅は引きつった笑みで答える。横を見ると、同じように黒い笑みを浮かべる武彦――。











「(……先が思いやられる……)」

その様子を遠くから眺めていたボンは、やれやれと深い溜息を吐いた。























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神様の日常~神様だって人間みたいに暮らしたい!~ 藤宮 麗 @ukyomizu

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