第21話 かみさま家族、大集合!
あれから宇雅は、芽衣の働く店に通い詰めていた。
「あっ! 特等席、今日は取られてる~」
宇雅の言うその特等席には、既に家族連れの客が座っていた。本人曰く、そこからが一番芽衣の姿が眺めやすいという。
「ちぇっ、」
軽く舌打ちをしながらその席を通り過ぎようとした宇雅だったが、横から飛び出てきた何者かの腕に行く手を遮られた。
「うわっ!?」
「ほほぅ、宇雅よ。君もここに来ていたのか」
未だ腕を掴まれたままの宇雅がソロリと顔を上げると、そこには見知った顔の人物。
「義父上!? 何故ここに……」
そこにいたのは宇雅の義父である須佐ノ男。そして……
「あ? コイツがあの、宇雅?」
見知らぬ男に名を呼ばれ、宇雅はそちらを見る。
褐色の肌に赤茶色の髪、その耳にはいくつもピアスを付けている。そう、あのメイを怯えさせた例の‟派手男”だ。
「……義父上、こちらは?」
「ああ、これは私の――」
「お待たせしましたー!」
そこへ会話を遮るように現れたのは、待ち望んでいた芽衣だった。
「芽衣~!!」
なんとも嬉しそうな声を上げて、宇雅は男の隣に座る。
「あ゛!? 隣に座んな!」
「……あれ? 宇雅さん、来てたの? 武彦と知り合い?」
芽衣はそう言いながら、注文の品をテキパキとテーブルに並べていく。
一方宇雅は武彦と呼ばれた男の方を振り返ると、黙ってろ、とでも言うように睨みつけた。
「僕いつものパンケーキね」
「……」
不機嫌そうな武彦を不思議そうに見つめ、芽衣は再び厨房へと消えた。
◆
「……で、これは何ですか?義父上」
これ、と指さされた武彦は顔を真っ赤にさせて宇雅を睨む。
この二人は初対面であったが、互いに初めて会う気がしなかった。妙な親近感を覚えながら、宇雅は再び隣に座る男を見つめた。
「これは私の息子だよ。武彦だ」
「息子!?」
息子――、そう言われればどことなく雰囲気がこの義父に似ていた。褐色の肌に整った顔、少し派手ではあるがなかなかの美形であった。
「ということは……芽衣の、」
わなわなと震える宇雅を睨みつつ武彦は答えた。
「アイツの兄だ。……と言っても‟今の”、じゃないがな」
須佐ノ男の息子、武彦。彼は確かに
芽衣とは幼馴染の関係にあるようで、互いの家を行き来する程の仲だ。
「と、いうわけだ。以後、仲良くするように」
「以後?」
宇雅が不思議そうに尋ねると、須佐ノ男はギラリとした目で言った。
「可愛い娘をどこぞの馬の骨なんかにやってたまるか」
先程とは違い、黒い笑みを浮かべたこの義父に宇雅は引きつった笑みで答える。横を見ると、同じように黒い笑みを浮かべる武彦――。
「(……先が思いやられる……)」
その様子を遠くから眺めていたボンは、やれやれと深い溜息を吐いた。
神様の日常~神様だって人間みたいに暮らしたい!~ 藤宮 麗 @ukyomizu
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