第20話 ~おまけ~ 甘いものはお好き?


「おーい! 芽衣~!」


 



彼らは今、とある飲食店に来ている。

彼らとはつまり宇雅、ボン、セイ、メイの四人である。

芽衣のバイト先であるこの店に、半ば強引に訪ねてきたのだった。


「注文おねが~い! 僕はんばーぐ!!」


相変わらず尻尾を隠しきれていないメイが、我先にと注文する。


「じゃあ僕はパスタ」

「わ、私も同じものを!」

「……」

「ボン?」


それぞれ注文する彼らだったが、ボンは難しい顔をしてメニューを睨んでいる。


「ううむ、」

「早くしてよボンさまー! 僕お腹すいたー!」

その言葉を受けても、未だにうんうんと唸っているボンに芽衣は声をかける。


「では、また後程、」

「待たれよ。……では、私は鬼盛ぱんけーきとやらを、」



その言葉を聞いて驚いたのは宇雅だけではなかった。メイはこれでもかと大きく目を見開き、セイに至っては顎が外れるのではないかという程にあんぐりと口を開けている。

 

「はい、鬼盛一丁! まいど!!」


何故か芽衣はラーメン屋のおやじのような返事をしてその場を去って行った。


「……」

「……」

「……」

「……何です。甘い物を頼んではいけないのですか?」

三人の視線を感じながら、ボンは居心地悪そうに言った。


「君がパンケーキ? 氷でも降るんじゃないかい?」

「失敬な!」

「おお恐ろしや。その顔でパンケーキとは」

「何だと!!」

やいのやいの、と言い合っているうちに料理が運ばれてくる。


「はい、ハンバーグにパスタ。それから……」

芽衣はよっこいしょ、と一際大きな皿をボンの目の前に差し出す。


「生クリームたっぷり、芽衣特製鬼盛パンケーキです!!」


ドーンと生クリームの乗ったそのパンケーキを見ると、ボンはゴクリと喉をならし、一気に食べ始めた。

唖然とそれを見つめる二人であったが、隣にいる宇雅がプルプルと体を震わせていることに気付く。


「あれ、どうしたのヌシサマ? 気持ち悪いの?」

「左様。こんな甘っちょろい物、主が好きな訳……」


セイとメイは宇雅を見つめながらそう言った。



だが顔を上げた宇雅は目を血走らせながらこう言った。






「芽衣ちゃん特製パンケーキ、僕に追加!!」







「(……芽衣、っていう言葉に反応した……?)」

「(……その様だ……)」


二人は互いに顔を見合わせ、クスクスと笑い合った。












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