奇跡(輝石)篇
パチパチパチ
小さな、そしてしっかりとした拍手がボクの耳に届いた。
ボクは、体を起こした。すると、ボクに向き合うようにしてブルーティアが腰を下ろしていた。
「あなたの答え、確かに聞かせていただきました」
ブルーティアは、静かに言った。手に握った何かを、ボクに差し出そうとしたそのとき、ブルーティアの視線がボクを通り越した後ろの何かに気がついた。
「…?」
ボクが振り向くと、遠くから太った刑事の影が、今にも倒れてしまいそうなほどに必死になって走ってくるのが見えた。
「ふぅ、懲りない人ですね」
ブルーティアは、飽きれたというようなため息をつき、立ち上がった。
「いずれまた、お会いいたしましょう」
そして、一目散に走って行ってしまった。
やがて、追いかけていた男が、ボクの前にやってきて立ち止まった。
「ふぅ、ふぅ、やあ、お嬢さん。また会いましたね。探し物は見つかりましたか? 私の方は、もうすぐというところですかね。なにしろすばしっこい奴でして。ふぅ。では、失礼」
男は、大きく息を荒げながら再び駆け出した。
ボクは立ち上がり、男を見送った。
しゃらん
小さな鈴が鳴るような音がして、地面が白く輝き始めた。
光は段々強くなり、やがてたくさんの鈴が鳴るような、不思議な音楽が聞こえ始め、ふわふわとした白い光の玉のような
ものがあちこちからわき上がった。
「……な、なに?」
ボクは辺りを見回した。蛍のような白い光は、大地のあちらこちらから次々とわき出して、漂いながら自然にボクの目の前に集まってきた。
ボクは手をのばした。暖かい光が、ボクを包むようにして、手の中に集まってきた。
シャラシャラシャラ
光は、鈴のようにきれいな音を立てながら、星のようにきらきらと輝いてボクの所へ集まってくる。
やがて地面の光がやむと同時に、音も少しずつ小さくなってきた。
全ての音が止み、ボクの手には、丸いガラスのように透き通る石が残った。
「光るストーン……」
石を透かすと、その中に無数の星たちが輝いているのがみえた。
ボクは、無言で小さな星空を抱きしめた。
(了)
ボクの家出〜惑星マヲルーダ〜 宮沢春日(はるか) @haruka_miyazawa
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