望郷篇

 360度の星のシャワーが、ボクの体一杯に降り注いでいた。

「どうしてるかなあ、みんな」

 ボクは、ふっと星空を眺めながら考えた。ここは、故郷からそれほどに遠く離れた場所、惑星マヲルーダ。


 不意に、女性の泣き声が聞こえてきた。星空がスクリーンのようになり、ボクの家のリビングが映った。

「私たち、きびしすぎたのよ」

 母さんが泣きながら父さんに訴えていた。

「あの子の未来ですもの。あの子に決めさせなくてはいけなかったのよ」

「だが、病院はどうするのだ? あの病院を、別の誰かにおめおめと引き渡せというのか?」

 父さんは、ボクの書き置きを握りしめ、顔をしかめていた。

「あなたは、娘よりも病院のほうが大事なの?!」

 母さんが金切り声をあげた。

「……すまん。わかっているとも。ただ少し寂しいのだ。私が育てた小さなあの病院が、どこの馬の骨とも判らぬ誰かに引き渡されるかもしれないことがね……」

「そうね。あなたはとても頑張っていたから」

「……子供は、親の持ち物ではない……、判っていたはずなのだがな……」

「帰ってきたら私たち、謝らなくてはならないわね」

 二人は部屋の天井をあおいだ。

「元気でいるかしら。いまごろ、どこにいるのかしら……」

「信じよう、私たちの大事な娘なのだから……」


「元気だよ、ボクはここにいるよ!」

 おもわずボクは叫んだ。しかし、父さんと母さんの姿は消え、目の前には再び無数の星が浮かぶ空が現れた。

涙がすっと、目尻から地面に伝わって行くのを感じた。

「幻……?」

 ボクは目を閉じた。歌が、自然にボクの口から滑りだしていた。


空にきらめく 無数の星たち

それぞれに光り輝く 小さな光の宝石

一つひとつの光は あんなにちいさいけれど

みんな 精一杯の光を投げている


地上に生きる たくさんの人たち

それぞれに光り輝く 小さな命の光

一人ひとりの光はこんなに小さいけれど

みんな 精一杯に生きて輝いている


この歌はボクの 小さな光

幾億の星にまぎれ 瞬くか細い光

ボクは歌い続けよう

あなたがボクをさがし出せるまで


届きますように いつかあなたのもとへ

届きますように ボクはここにいるよ


届いていますか あなたのもとへ

届いていますか ボクはここにいるよ

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