第23話 新たなる明日へ

生徒会選挙から1か月後彩音を含む奈々達4人は、運動公園でシスターマリアと会って今までの事を話していた。

この1か月生徒会は、変わってった。以前のような粛清は、大幅に減り話し合うことを重視していった。粛清は、不良共や悪質な者等、基本的に話し合いに全く応じない相手に対し攻撃された場合にのみと生徒会から先に攻撃することを禁止していた。時間はかかったが、以前の様なぎすぎす感は減り徐々に学園全体に明るさが出始めた。

「とまあ、ざっくりとそんな感じです」

奈々は、マリアに大雑把に説明した。

「ふーん」

マリアは、煙草を吸いながら話を聞いていた。

「んで、シードはどうなったんだ?」

「あー、それは会長と話して渡す分は持ってきたよ」

そう言って奈々は、布袋を2つ出した。

「えらく多いな」

袋を開けて、中身を確認したマリアはぴくっと顔をひきつらせた。

「おまえ・・・これは・・・・」

中身は、メインシードがなく欠片で一杯であった。

「いやーメインは、決闘に勝ったけど選挙に負けたんでチャラになってしまいまして・・・それで今使ってない欠片を貰うことで折り合いを付けました」

「・・・・そういうことか」

マリアは、しょうがないかと納得して袋を受け取った。

「まあこれでも、報告分にはいいだろう。欠片直すのめんどくさいって言ったのにこんなに粉々にしやがって」

中身を見ながらぶつぶつ愚痴っていた。

「それで、報告分にはどれぐらい持つ?」

念のため、奈々は聞いてみた。

「まあ期限は、相当先だから50年はもつかな」

「うちらにとっては十分だな」

「人間の寿命と一緒にするな」

しばらくして、マリアは袋を持って

「まあ、この分のお礼はまた何かで返すよ。まだこの辺には、シードがあるようだから見つけたらまた教えてくれ」

そう言うと、マリアは帰って行った。

それを見た後も4人は、しばらく話をしていた。

「あの人が、天使なんですか?」

彩音は、初対面だったので奈々達に確認していた。

「そう、あれでも天使です・・・確証はあんましないけど」

「あんな、やさぐれシスターでも天使なんだから世も末だな」

「ほんとですわね」

「はぁ・・・」

3人の返答に彩音は、いまいち納得しない返答だった。

「それで・・・」

彩音が、話そうとした時携帯の着信音が鳴った。

「ちょっと待ってください」

着信は、彩音宛てであった。

「はい、もしもし・・・・・はいそうです・・・・・はい・・・・・えっ!?」

彩音は、驚きながら暫く話した後電話を切った。

「なんだったの?」

晶は聞いた。

「そ、それが・・・・お姉ちゃんが・・・」

「美紀さんが!?」

奈々達は、立ち上がって電話の事を聞き病院に向かった。

20分後病院に着き、4人とも走って美紀が眠る病室に向かいそして、病室の前に着き扉を開けた

そこには、以前眠っていた彩音美紀がベッドを起こして

目を開けていた。

「お、お姉ちゃん・・・」

彩音優の声に、振り向き

「おはよう・・・・優」

微笑を浮かべ挨拶をした瞬間、優は泣きながら飛びついた。

「お姉ちゃん!・・・・お姉ちゃん!!」

抱きつき涙を流しながら、美紀を呼んだ。

「どうしたの?急に泣くなんて」

美紀は、優しく頭を撫でた。

「よかった、美紀さんが本当に目を覚ましたなんて」

晶は、その情景を見て涙がほろりと落ちたが

「ほんま、よがったよがったよぉ~」

奈々は、鼻水を垂らして泣いていた。

「おまえ・・・・・」

「はい、ハンカチ」

「ありがどぉ・・・ちーん」

楓から貰ったハンカチで、奈々は鼻をかんだ。

「とりあえず、二人だけにしようぜ」

「そうですわね」

「うん・・うん」

彩音姉妹だけを残して3人は、静香に部屋を出た。

「ちょっといいか」

部屋を出た直後、声をかけられた。

振り向くとそこには、東郷静香がいた。

「会長?」

「なんでしょうか?」

「どぼじたんでずか?」

「おまえは、暫くしゃべるな」

奈々は、鼻声になっていたので晶は、雰囲気を壊されると思い黙らせた。

そのあと、東郷の後について行き屋上に向かった。

「お前たちには、話しておこうと思う」

東郷は、そう言った後暫く間をおいて

「実は、美紀さんの記憶が一部ないんだ」

「記憶がない?」

晶が、聞いた。

「正確には、飛び降りた日のことを覚えていないんだ。だから、自分が何故病院にいることもわかっていない」

「で、どうしたんですか?」

「事故で、こん睡状態になっていたと説明した」

「それで誤魔化せるんですか?」

「美紀さん自身も『そうですか』と納得はしていたが、いつ思い出すかわからないそうなったら・・・」

東郷は、美紀が飛び降りたことを思い出して錯乱するかもしれないという言葉を言おうとしたが口を摘むんだ。

「それは、妹にも説明するんですか?」

「しなくてはいかんだろう。それは私からする」

「わかりました」

晶は、了承した。

「すまんな、このことは言うべきか迷ったんだが」

東郷は、一言謝罪した。

「まあこういうときは、お互い様ですから」

「そうですわね」

「・・・・」

奈々は、無言であった。

「どうした奈々?」

「いや、暫く喋るなというから・・・」

「泣きやんだならもういいよ」

晶は、呆れて言った。

こうして、話が終わり奈々達は病院の前で彩音を待った。

「みんな、ここにいたんだ」

30分ほどして、彩音は現れた。

「お姉ちゃんとの面会は終わった?」

「うん、あと静香さんからの話も」

「そうか」

「彩音は、そのことどう思う?」

「いいと思います。意識的に、思い出したくないのかもしれないから・・・・今はこのままで・・」

少し下を向いて、彩音が言った後

「よし、彩音ちゃんご飯食べにいこう!」

奈々は、彩音の肩をがしっと掴んだ。

「お姉ちゃんの、お目覚め記念におごるよ」

「お?奈々にしては気前がいい」

「できれば1000円以内で」

「その辺は、めめっちいな」

「うるさい、これでも奮発してるんだぞ」

晶と奈々のやり取りを聞きながら4人は、病院を後にして夕日の中を歩いていた。

「あの・・・・みなさん」

彩音は、急に声をかけた。

「何?」

「実は、お姉ちゃんに逢ってから思ったんです。みんな私の事名字で呼んでるなぁって」

「まあたしかに」

「そうですわね」

「考えてなかった」

3人は、納得した後

「私は、友達なんですよね?」

彩音は、確認するように言った。

「そうだけど?」

晶が、返答した。

「でもみんなは、名前で呼び合ってるよね」

「うん」

「だから、私も・・・その・・・・な・・名前で呼んでほしいの・・・・・・だ、駄目かな?」

彩音は、恥ずかしながら下を向いた。

「駄目だ!!」

奈々がきっぱり言った。

「ええーーーっ!?」

彩音は、涙目でショックを受けたが

ボカッ

晶が、奈々を殴った。

「冗談はやめろ」

「はーい、ごめんなさい」

奈々は、頭を押さえて彩音に謝った。

「まあたしかに、友達というならというのもあるな・・・じゃあ、改めて『優』」

晶の一言に、彩音改め優はぱあっと笑顔になった。

「そうですわね、じゃあ私も改めまして『優さん』」

「はいっ」

楓も、名前で呼び優は返事をした。

「それじゃ私も・・・あ・・」

奈々は、『彩音』と言いかけたが晶が鋭い目つきで睨んでいたため言うのをやめて

「そんじゃ、行きましょうか『優ちゃん』」

奈々は、にっと笑い優に手を差し伸べた。

「はいっ、奈々ちゃん」

優は、本当の友達なったとうれし泣きを浮かべながら奈々の手を掴んだ。

そして奈々達は、太陽が落ちていく中手をつなぎながら歩いて行った。


こうして、新たなる明日へ少女たちは進んで行くのであった。

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武装天使 エンジェルスクライド むるたん @murutan

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