第22話 生徒会講演会の喜劇
全校生徒を集めて、演説をする生徒会講演会当日、生徒はすでに体育館に集まっていた。
「よーし、気合入れていくぞー」
奈々は、やる気満々であった。
「あっそ」
「がんばってくださいね」
晶と楓は、普通であった。
「けど、一番目は会長ですね」
彩音は、プログラムを見ながら言った。
「そうなんだよねー、一番がよかったのになぁ」
「どのみち、喋るんだからいいんじゃねーか?」
「いや、やりたいことがあるから」
奈々は、にやりと笑いながら言った。
「こいつ、よからぬこと企んでるな」
晶は、ジト目で奈々を見た。
こうして、東郷が壇上に立った。
しばらくの沈黙の後東郷は、語り始めた。
「私は、生徒会長になりみんなが悲しまないようにとやってきたが、そうではなかったというのがわかった。私は、以前守りたい人を守れなかった。その教訓から、力ずくでみんなを押し付けようと考えてしまい暴力的になっていた。これでは、前会長とやっていることは変わらなかったというのが、打ちのめされてからわかった。今更許してくれというのも虫が悪いかもしれないが、今一度チャンスをくれるというのなら改めようと思う。だから、みんなの一票をお願いします」
そういうと、東郷は頭を下げた。
今まで、一度もそんな姿を見たことなかった東郷を見て生徒たちは、どよめいた。
その時、奈々は壇上に向かい
「そんなんじゃ、足りないねぇ」
東郷を、見下すように言った。
「では、どうすればいい?」
顔を上げ東郷は、奈々に聞いた。
「そうだねぇ・・・・土下座でもしてもらおうか」
奈々は、にやにやしながら言った。
「あいつ、ここぞとばかりにやってるな」
晶は、その状況を見ながら
「楓、準備してくれ」
「わかりました」
楓に、支持を出した。
「なんの準備ですか?」
彩音は、晶に聞いた。
「あいつの暴走を止める準備」
「暴走?」
「あいつは、図に乗ると毎度暴走するからそれを止める準備さ」
「はあ・・・」
「まあ、彩音はそこで見てていいよ」
そう言って晶は、準備運動を始めた。
そのころ奈々と東郷は、壇上で見合っていた。
「土下座・・・」
「そう、土下座。それぐらいしないと誠意は伝わらないと思うのよねぇ」
「・・・・・・わかった」
暫く東郷は、考えた後その場で正座した。
「ふふん」
奈々は、腕を組んで勝ったという顔で見ていた。
そして、東郷は頭を地に付けて土下座をした。
その情景を見て生徒たちは、更にざわついた。
「そんな・・・生徒会長が・・」
「まさか・・・・」
「ありえない・・・」
どよめきが、消えない中
ドカッ
奈々は、東郷の頭を踏みつけた。
「どうよ、踏みつけられる気分は?」
奈々は、東郷を見下ろしながら言った。
「私達は、こうやって踏みつけられていたんだそのことがわかったか」
その瞬間、周りは静まり返ったが
「き、貴様!御前になんということを!!」
如月が、苦無を持って壇上に上がろうとしていたが
「だめです、副会長」
「落ち着いてください」
他の、メンバーに取り押さえられていた。
「外野は、そこにいな。さて次は・・・」
奈々は、更ににやにやしながら
「よーし、そのままスカートめくってパンツ晒してやるか」
そう言って、スカートに手を伸ばそうとした瞬間
「いい加減にしろ」
ボカッ
晶が、奈々を殴って止めた。
「いったー、なにすんのさ晶ちゃん」
「何やってんだ、おまえは」
「以前、こいつに頭踏みつけられたんだその仕返しだ」
「ただの、腹いせかよ」
「そう、あとはパンツ見てて醜態をさらしてどつぼに落とせば・・」
「やめる気ないな」
「もち、ないね!」
「お前の言葉を借りるが、口で言ってもわからん奴は・・」
そう言って、晶が手を上げた瞬間
バシュンッ
奈々の頭に、矢が命中した
「がっ・・」
「ぶっとばして、わからせるってね」
奈々は、そのまま白目をむいて倒れた。
「もういいですよ、会長」
晶は、奈々を掴んで言った。
「そこまでやれば、みんな納得するだろうしそれに、あなた以外この学園をまとめる人はいないと私も思いますから」
「陣内・・・」
東郷は、頭を上げて晶を見た。
「それに、そんなしおらしい顔あなたらしくありませんよ」
そう言って、晶は奈々を引きずって下がった。
「ふうっ」
楓は、2階から構えていた弓を下ろし静かにその場を離れた。
東郷の、演説が終わりしばらくして桜瀬は壇上に現れた。
「さて、次は私の演説ですわね」
桜瀬は、原稿を開き
「私は、この度生徒会長に立候補しました桜瀬・・・・・・」
読み始めて正面を見た瞬間桜瀬は、沈黙してしまった。
それまでいた生徒たちが、すでに全員いなかった。
「・・・・・・わたしの演説を聞けーーー!!!」
体育館に、絶叫が響いた。
そして投票が行われ、結果は東郷静香の圧勝になった。
「ぬおおおお、なぜだあぁぁぁ」
その結果を見て、奈々は絶望していた。
「当たり前だ、バカたれ」
晶は、冷たい目で奈々を見た。
「それはいい、それはいいけどなんで晶ちゃんに票が入ってるんだよ!」
結果には、立候補していない陣内晶の票が少し入っていた
「知らねぇよ」
「多分、講演会の立ち回りがかっこよかったので腐女子の票が入ったんでしょうね」
「腐女子!?」
楓の返答に、晶は驚いた。
「どおりで、昨日からラブレターが来て全部女子だったのがおかしいと思ったよ」
晶は、そのことで納得した。
「まあとりあえず、悪役お疲れ」
そう言いながら晶は、奈々の肩をたたいた。
「え?どういうことですか?」
彩音は、晶に聞いた。
「こいつは、始めから会長なんてなろうと思ってないよ。会長はそのままで少し方針を変えてほしいという願いなんだろうなという感じだ」
「え?じゃあ、コスプレした私は?」
「ただの、お祭りお遊びだったということさ」
「やっぱり、遊びだったんじゃないですか!」
彩音は、確信にいたりショックを受けた。
「まあこれで、少しは変わればいいんじゃね?」
奈々は、そう言って背伸びをして
「んじゃま、帰りますか」
帰ろうとしたが
「今、午前だよ」
晶が、冷たく奈々につっこんだ。
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