現実世界にあるのかないのか、まったくわからない不思議な駅舎で働く主人公。
姿を見ることもできない駅長。
出入りするさまざまな人々。
なぜこのような駅舎が存在して、多くの人々がこの駅を利用するのか?
物語は、汽車が吐きだす煙惑わされるように進行する。
何といっても、情景がすばらしい。
駅舎や汽車の描写、登場人物、彼らの想い出、喜び哀しみ、口にするもの、そういったものひとつひとつにまで細心の心遣いで描きだされている。
描かれる駅舎は、どこまでいっても果てがない迷路のようであり、登場人物を、読者を惑わせる。
少々長いが、一気に読んでしまうことができる。
読むべき価値のある物語だ!
カタコンベと呼ばれる架空の駅にて働く、駅員たちの切ないファンタジー。
文字通り「地下墓地」の様相をかたどった駅を巡り、主人公と駅長の寂寥感漂う人間模様が紡がれています。
駅をいかに存続するか。
駅を引き継いで行くことは、敬愛する駅長の想いを繋ぐこと。
話を分割せず、あえて10万文字をまとめてぶっ込んで来た作者様の、飽くなき挑戦に圧倒されました。
一気に読め、と。
読了するまで、この世界に引き込んでみせるぞ、と。
それはさながら、カタコンベ駅を離れられないエーレたちの自縄自縛にも似ています。
ドリンクと茶菓子を用意して、気長に読みましょう。
いつしか喉を潤すのも忘れて、滂沱の涙を流すこと請け合いです。