四季の花

かさかさたろう

第1話 桜木(おうぼく)

あの木こそ 枯れ木と思いて 人々は

目にも留めぬと 冬枯れに

過ぎ去る寒風 一房の

綿菓子付きたる 桃色に

今年も来るか 春の色


少々の 変化気付かず 人々の

いそいそと歩く 足音に

紛れ混じって 近付くは

これ見よがしなる 堂々の

春色桜の 美しさ

浮き沈みありて 青年の

悩みもがきて苦しみて

幸せ光る 春の色

今年も参るか 春の色


古の 人またこれは 見事なり

口々讃えむ 見事なり

ひとひらひとひら 花びらは

如何にとめんこい 五枚びら

その集まりたるは 堂々の

枝広げたる 春の色


宴朗らか 意気揚揚

酒傾けて 戯れん

我は想いと 寄り添いて

夜の紫 讃えたり

一つ心に 思ひ出の

幾重重なり この生命

歌え踊れや 生命の

歓喜のままにと 伝え伝えに

ああ麗しき 春の色


ゆく道道に 桃色の

香り薫れる 絨毯の

この世のものかと 疑いつ

春また去りしか 悲しきか

枝も見る影 相もなく

悲しき定めか世の常か

いつかさび色目立ちたり

いつまた来ぬか 春の色 春の花


春も去り 密やかに出でる 若草の

溢れる輝き集まりて

ひと足早くに 春過ぎし

しかして再び見えんと

我いち早くに 散り去りて

蓄え 伸び伸び 堂々と

一瞬のため 長かりし

時を懸命生きるのだ

陰に潜みて黙々と

蓄えたらむは 春の色


我再びに見えんと 蓄えたらむは 春の色

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四季の花 かさかさたろう @kasakasatarou

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