第10話澤村弓月

澤村弓月17歳仮名。

弓月は中学卒業後、渋谷で遊び疲れる程毎日遊んでいた。

彼氏もいるし、友達もいる。

充実してるし不満もない。

割り切りで援助交際してお金を手に入れていたしお金もあった。

毎日楽しくて、家にも帰らなかった。


ある日風邪のような症状が続いた。

遊びたくても何か体調悪い。

友達からも心配されて病院に行った。


エイズだった。

この世が終わった気がした。

17歳で?

もう稼げないし遊べない?

友達にも言えない。彼氏に移したかも。

バレる前に裏話系雑誌に載ってた自殺所に行くことにした。

治らないんでしょ?家族には大切にされてないし、友達彼氏にバレたら縁切られるし。


自殺所に向かうと汚い男がいた。

何こいつと思いながら通り過ぎようとしたら足首を掴まれた。

「うっわ。何」

とっさに出た言葉だった。

髪はボサボサフケだらけ。皮膚は黒く変色していて悪臭がする。

「あ、あの死ぬ前におねがいがあるんです」

汚い男はそういって土下座をした。

面倒くさいと思いながらも聞いてあげた。

どうやらやらせて欲しいと。

そうしたら死ななくてもいい。

踏みとどまってまた生きていけるかもしれないと。

弓月は笑って言った。

「生理中だけどそれでいいならいいよどうせ死ぬんだし気持ちよくなって死のうかな」


男は飛びつきありがとうありがとうと抱きしめた。

臭い。

何食って生きてんのってレベル。

階段の踊り場で服を脱いだ。

男は緊張しながらも触れてきた。

震えている手。

息を止めながら一生懸命感じている振りをした。

何回も何回も交わった。


「あ、ありがとうございました!!」

いい年こいたおっさんがペコペコしてる。

滑稽でたまらなかった。

「あたし、エイズなの。おじさんも死にたいんだよね?」

男は顔面蒼白になりながら震えていた。

「一緒に逝こうよ、ね?生理だったし多分移ってんじゃないかなぁー」

男は取り乱した。聞いてない嘘だ!と首を絞めようとしてきた。

「死にたいんでしょ?あたし首締めて殺されてもいいけど?死ぬために来たしそれとも死ぬまでヤる?」

弓月は楽しんでいた。この空気が楽しくてしょうが無かった。

辺りには腐臭が漂っていた。


─────────

彰彦は騙されたと思った。

もし感染していたら生きていても、もう出来ない。

折角生きていこうと思ったのに。

高確率で感染していると思った。

何度も何度もしてしまったし、彼女の血が彰彦の体内に混入している。


「一緒に逝っちゃおうか、俺、彰彦。君は?」

彼女は薄ら笑いで弓月と答えた。

見た目若そうに見えた。

「17歳だよ。良かったじゃん死ぬ前に若い子抱けてさ」

カチンと来たでも堪えた。

「どうせ童貞だったんでしょ」

「童貞なわけないじゃないか」

弓月は吹き出しながらも

「はは、意味わかんねぇそんなツラで出来るわけないじゃん気持ち悪ー」

彰彦は笑っていった。拳を隠しながら。

「ほら下で転がってる新しい女たちは抱いてやった奴らだよ童貞じゃない」

「死んだ奴とやってたってわけ?」

「そうだよ」力強く握っていた拳は弓月の耳元をかすった。

仰け反りながら「きゃっ」と叫び

「何すんのよ!人殺し!」

「それ俺に言えんの?病気移しといて」

右頬を拳は鈍い音を響かせた。

声にならない声で弓月は泣いていた。

泣いていても彰彦は容赦なく殴り続けた。

「人を馬鹿にしやがった罰だ」

弓月はヒクヒクと体を動かした。

次第に弓月は声も出さないグチャグチャの人形になっていた。

明彦はいつもどおり階段の下に落とした。

「馬鹿女め」


彰彦は何日も何日も自殺所の階段にいた。

腹が空くと新しい死体を喰らうようになった。

ライターで炙った死体を喰らい飢えをしのんだ。

いつの間にか50階にたどり着いていた。

病気を移されていなくてもきっと違う病気にはなってるだろうなぁと思いながらも彰彦はフェンスに手をかけた。

「かーちゃん俺ガチもんの悪者になっちゃった。パソコンの仕事できなくてごめんそれにかーちゃん一人置いてきてごめんー」

身を投げて気を失う。

あたりには死体の山腐臭。

蛆、ハエがたかり原型をとどめていない死体も多かった。

明彦を殺したのは50階からの落下死ではなく死体の骨が刺さっての出血死だった。

「俺、ついてねぇーー」

再び目を閉じるそれから目を開けることはなかった。

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自殺所 湊渡蓮 @minatoren

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