魔法使えないけどいいですか?

作者 楠木尚

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★★★ Excellent!!!

友達もおらず目的もないのに日々バイトばかりして過ごす大学生の雨宮。ある日彼はバイト先の同僚から魔法少女をレンタルできる店の存在を知らされ、興味本位で試してみることに。しかし、彼の貯金でレンタルできたのは魔法が使えない半人前の魔法少女・渚だけだった。

かくして始まる二人の奇妙な共同生活。他人とのコミュニケーションが苦手な雨宮と、どこか事務的な態度が目立つ渚。当然最初はぎくしゃくするが、徐々に打ち解けていく。渚は学食で食事をしたり、本を買ってもらったりと些細なことで喜びを見せるようになり、雨宮は渚のアドバイスを受けて少しずつ周囲の人たちと会話もするように。それぞれ変化を見せる二人だが、そんな中、渚のレンタル期間の終了が迫り……。

魔法を使えない魔法少女と友達のいない大学生という、不器用な二人の物語。華々しい魔法や大きな奇跡はないけれど、他愛ないことで笑ったり、些細なことで悩んだりと等身大の二人の日常は読んでいてじんわりと心に沁みてくる。この一文しかないというラストもお見事で温かい気持ちになれる中編だ。

(「魔法少女の物語」4選/文=柿崎 憲)

★★ Very Good!!

異能の力や劇的な展開があるわけでもない、主人公が偉業を成し遂げるわけでもない。なのにこれだけ一気に引き込まれて、二人にしあわせになって欲しいと感じたのは不思議で、それこそ魔法のような語り口でした。魔法が使えないはずの彼女が起こした本当の魔法は、彼女自身も救ってくれたのでしょうか。
あえて呪文も魔法の道具も何もないのがいいですね。それでいてお金、本、カクテルといったさりげない小道具が話に味を添えています。

綺麗に締めくくってあり、読後感もさわやかでした。これからも期待しています❗


★★★ Excellent!!!

やや雑なカテゴライズになってしまうのですが、現代劇の少し不思議な恋愛ファンタジーでした。

淡々とした一人称による文体が特徴的なのですが、それが物語の内容と極めてよく馴染んでいます。
不器用で友達を作ることができない主人公と、魔法少女でありながら魔法を使うことができないヒロイン。
その二人のあいだに漂う空気感が素晴らしい。

ストーリーの進行と共に移ろう主人公とヒロインの関係性を追い続けるうち、読み終える頃には思わず胸がいっぱいになってしまいました。
じんわりと心が暖かくなるような感動を味わいたい方は、是非ご一読を。

★★ Very Good!!

”魔法を使えない”魔法少女と平凡な大学生の関係性を主体に淡々と綴られていく、現代お伽話。
一人称の語りや物語運びで映し出していく作品世界の描き方がよく、文章を読んでいると、二人の姿に焦点を当てた被写界深度の浅い映像が脳裏に浮かんで、まるで淡く優しい邦画のようでした。

導入部からの読者の引き込み方がよく、そのまま流れるように次へ次へと読ませてあっという間に最後まで読ませてしまいます。

この作者さんの描く作品の雰囲気を活かして、次は登場人物間の関係性の変化と日常を丹念に積み重ねていく長編作品を読みたいと思っております。

★★★ Excellent!!!


 ネタバレ抜きでレビューを書くことが、非常に困難な作品。
 重度のコミュ障を患う主人公雨宮と、魔法が使えない魔法少女渚の奇妙な共同生活が軽快な文体で綴られて行く。
 青い鳥は身近にいたよ・・・
 では、終われないラストの告白にドキッとさせられる。
 これは深読みかな?