3-2 シナリオ掲載(2-4話 仙人の伝説)

『異世界仙人の見る夢は』2-4話 仙人の伝説を公開しました。

 今回も『シナリオ変換法』で書いてみましたので、そのシナリオをここにアップいたします。


 前回は『ト書き』や『セリフ文』を小説の『地の文』に変換するのがなかなか難しかったというのが、頭にあったせいかと思われるのですが、『ト書き』の部分がなんだか、小説の『地の文』のようになってしまいました。


 小説への変換は少し楽でしたが、シナリオとしては良くないような気がします。

ん? シナリオでなく小説を書きたかったから、それでいいのかな? いやいや、そんなことはないでしょう? ううむ。

 

そして、もう一度下記のページの、特に『【3】小説変換してみたら……!』の項をじっくり読み返ししてから、小説への変換に取り組みました。

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『まずシナリオを書いてから小説に変換するとだいたい分量が倍になるので原稿枚数が予測しやすい件 #シナ説変換法』吾奏伸(あそうしん)様htttps://kakuyomu.jp/works/1177354054880716109

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その結果! 分析ツールの総評から『若干説明寄り・要約寄りな文章展開』の一文が消えました。やった!


ところが、文章診断ロゴーンの分析結果、文章の個性がBからEに下がりました。個性的から平凡に……がががが~ん!)

まだまだ、私の試行錯誤は続くようです。ガンバリます!


では、以下にそのシナリオを掲載いたします。

ト書きが変です。

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仙人 シナリオ 一六話 二-四

仙人の伝説


◯遊覧船のデッキ(十五時頃)


   ロオウとリュシアンがデッキに上がってくる。

   何事もなかったかのような涼しい顔。

   遊覧船はハトナ湾の沖合に浮かぶ小島に向かっている。

   それほど大きくは無い小島の周囲は切り立った崖だ。

   小島の頂には古くから聖堂がひとつ建っているという。


   デッキに面したサロンには海に向かって椅子が並ぶ

   そこに貴賓室で出会った老夫婦が寛いでいた

   

   ロオウは懐に納めた小瓶に結界を施し何食わぬ顔

   リュシアンを連れてデッキを歩き、小島を眺めている


老紳士「おや、こちらでしたか?」


   デッキチェアの老紳士から声がかかる。


ロオウ「おお、これはこれは。奥方殿も」

老紳士「船は如何です?」

ロオウ「快適です。船脚は速いし、揺れもそうありませんね」

老紳士「そうそう、そうでしょう! さっきまで王宮前にいましたのに、ほらもう! 聖堂が近づいてきましたよ」

ロオウ「ああ、あの岩山の影」


   船が小島の周囲を遊覧すると、聖堂の姿が見えてくる

   老婦人が席を立ち、リュシアンの側で指を指す


老婦人「ほら、見えまして? 白い聖堂が立っていますわ」

リュシ「はい。奥方様。岩山の麓に輝いて見えます」

老婦人「本当。光を浴びて白く光って、美しいわ」


   老紳士も老婦人の側により、懐かしげに小島を見上げる


老紳士「あなた方は、あの聖堂の伝説をご存じですか」

老婦人「昔は、舞台の演目でもよくかかっていましたけど、若い方はあまりご存じないかもしれませんね」


   この島の聖堂は王室直轄のご禁足地で、年一度の勅使の礼拝の他は、神職以外立ち入れないのだそうだ。聖堂に詣でたい者は、船から見上げて祈りを捧げるのだという。

   

   船は小島の周りを一周した後、ゆっくりと離れる。


老紳士「少し風が出てきました。お茶でもいかがですかな」

老婦人「そうだわ。ラウンジに聖堂伝説の綺麗な絵が掛かっているのです。仙人の伝説のお話しを教えて差し上げましょう」


   ね、そうしましょう? と老夫人はリュシアンの目を覗き込む。仙人の伝説なのですか。と目を丸くするリュシアンを、老夫婦は楽しそうに見ている。


ロオウ「それはありがたい。ぜひお聞かせください。リュシアン、そうさせていただこう」

リュシ「はい。楽しみです」



◯遊覧船のラウンジ 聖堂伝説の絵画の前


   楽師の奏でる弦楽が静かに響いている。

   ラウンジの中央、奥の壁に大きな絵画が掛けられている

   濃く淡くモスグリーンの色調も穏やかな美しい絵だ。


   絵の中央右下寄りに、横たわる高貴な青年と、その青年の頭を労わるように膝に乗せた美しい少女の姿が大きく描かれている。少女はひざまづいて、画面の中央から少し左上を祈るように見上げている。


   その視線の先には、ひとりの老人の姿がある。老人の長くまっすぐな白い髪と髭が銀箔で光り輝くように描かれていて、その左手には書物を持ち、その右手を軽くかざして、ふたりに仙術を施してるように見える。老人の右手からは淡い光が降り注ぐかのように金の砂子が蒔かれていて、きらきらと灯りを反射して美しい。


   絵の背景には小さな泉と白い聖堂が描かれ、そこがあの聖堂の小島であることがわかる。遠景にぼんやりと描かれているのは、ロオウの館のある岬のようだ。岬の突端には白い館の姿もうっすらと描きこまれている。


ロオウ「ほう。この絵は……」

老婦人「美しいでしょう? この絵は、船が聖堂の小島から、あの岬を巡る時だけ、幕を開けて公開されるのだそうですよ」

老紳士「楽師も聖堂の仙人伝説の戯曲をやってくれているようだね」

老婦人「これは序曲ね。素敵だわ」


   一等ラウンジに貴賓室の乗客が集まってきて、遠ざかりゆく小島や美しい絵画を眺めつつ、楽師の演奏に耳を傾けている。


老紳士「この絵は、この国の建国神話にもある、聖堂の仙人伝説を描いているのですよ。あの横たわる青年は初代フォルクセイル王の若き姿、ひざまずく少女はその妃の宮ですね」

ロオウ「あの青年が……」


   ラウンジの執事がお茶の用意をしてくれたので、老夫婦とロオウとリュシアンは絵を見上げられる席について老夫婦の話を聞く。


老紳士「今からおよそ、二千年も前の事。ここは名もなき美しい港であったそうです。ひとりの青年と少女が恋をしました。その青年は港を守る一族の跡取り。少女は雪を戴く天山を越えた遠い国からここを訪れた流浪の民であったそうです」


リュシ「天山とは、あのセレネピオスの天山ですか?」

老婦人「まあ、良くご存じね。そうですよ、遠い国の娘だったの。それでふたりの恋は叶わないかと思われたのよ」


   いつの間にか、老夫婦の周りには伝説の話を聞こうとする人びとが静かに集まって来ていた。


老婦人「その頃、この国のこの港に恐ろしい疫病が蔓延したのだそうです。港を護る一族は方々手を尽くしましたが、病の勢いは増すばかり。そしてとうとう大事な跡取りの青年まで、その疫病に倒れてしまったのです」


   乗客達は皆静かにその話を聞いている。

   いつの間にか楽師の演奏はレクイエムに変わっている。


老紳士「昔のことですから、疫病が流行ると中々手がつけられません。病に罹ったものは皆、あの聖堂のある小島に棄てられたのだそうです。まだ息のあるにもかかわらず」


   近くで話を聞いていた幼い子どもが母親の膝にすがりついてしまった。母親が『大丈夫ですよ』と小さな声で子どもの頭を撫でて慰めているのが見える。


老婦人「跡取りの青年も、自分の病を覚ると自ら小舟を出して沖の小島に向かったのだそうです。愛しい少女を残して」


   聴衆は皆、伝説の絵画を眺めている。

   あの横たわる青年は病に侵されているのか。


老婦人「あのひざまずく少女、あの子は病に罹っていなかったそうなの。それでも嵐の中を小舟を操り、愛する青年の姿を求めてこの小島までやってきたそうです」


老紳士「よほど一緒にいたかったのだろうね。少女が小島に横たわる病人達をひとりひとり探して回り、やっと青年を見つけた時、青年の命の灯はもう今にも消えようとしていたそうだ」


   話を聞いていた若い娘がハンカチを出して涙を拭う。

   楽師の奏でる哀しい調べが涙を誘ったのか。


老紳士「これは偶然だろうか、それとも必然だったのだろうか。少女は雪を戴く天山の民だった。聖地に祈る言葉を持っていたのだという。今は失われたその祈りの言葉を、乙女が必死の思いで口にした時、その奇跡は正に顕れたのだそうです」


   皆の視線が絵画の仙人に集まるのがわかる。

   奏でられる戯曲は厳かなものに変わっている。


老婦人「その時、真白に輝く老仙人が忽然と姿を顕わされました。静かにふたりをご覧になり、金に輝く法力の仙術を惜しげもなく施され瞬く間に青年の病は癒されました。青年と乙女の無償の愛を美しとせられたのでしょう」


リュシ「青年は仙人の仙術で癒されたのですか?」

老紳士「そうだね。そしてこれは本当にあった話なのだよ」

ロオウ「なるほど、確かにそのようですね……」


老婦人「ふふふ。その時、病の癒えた青年と天山の乙女は、その真白の仙人様から法力の極意を授かったのだそうですよ」


老紳士「そして青年と天山の乙女はふたりで国中の病を癒して回ったのだそうだ。もったいなくも、お二人はこの国の開祖、フォルクセイルの王室の初代様とおなり遊ばされたということです」


   老夫婦の話が終わった。期せずして一同から拍手が起こる。楽師の演奏も明るく穏やかなものとなっている。

   ラウンジの執事が、老夫婦に果実酒を運んできた。良い話をしてくださったと仕切りに礼を述べている。


老紳士「ほら、あの絵の背景に遠く描かれている岬があるでしょう? これが今まさに巡っているあの岬なのですよ」


   老紳士が窓の外で夕陽を浴びるロオウの岬を指し示す。


老紳士「その仙人様はしばらくの間、あの岬に留まられて、この港の行く末をお見守りくださったということですよ。だから今でもあの岬の突端には誰も立ち入れない場所があるそうです。遠くから見ると仙人の館があるような気がするのですが、

近づこうとしても森の奥には入れないのだそうです」


   ああ、それが歴史公園なんですね、と一同の話が盛り上がる。それで、このフォルクセイルの王国は仙人様に護られた国といわれるのだと誰かが答えているようだ。


   リュシアンが、何やら私に尋ねたいことがありそうな顔で

   こちらを見ている。

   そうだね、いろいろと聞きたいことがあるだろうね。


執 事「皆様、おかげさまで良い一時となりました。お話しくださいましたお二方に厚く御礼申し上げます」

   一同からあらためて拍手が起こる。


執 事「この地の由来は、その名にも残っておりまして、古くは聖堂の《ハトナ》ハル、そして今は聖堂の《ハトナ》輝くガンドと呼ばれているわけなのです。あの小島の白い聖堂も、仙人様が法力で一瞬にして顕現された奇跡なのだそうでございますよ」


   ほうほうと皆、執事の薀蓄に耳を傾けている。


老紳士「左様、左様。良き話ですな。元来この国の国名からして、顕現した《フォルク》奇跡セイルと申しますからな。実に素晴らしいことです」


   ほら、そろそろ岬を巡りますよ。見えてくるのは王立学舎の波止場です。我が国は建国以来、法力と仙術の研究に秀でています。この学舎を巣立った学徒から、かのセレネピオス法学院へ進まれる方も多く輩出されているのですから。執事による案内が続いている。


   ふむ。一体どのような研究に力を入れているというのか? そうかそれが、この法力油に繋がっているのかもしれぬ。よくよく吟味せねばならぬと、夕陽を浴びてきらきらと輝く王立学舎の瓦屋根を眺めながらロオウはひとり考えこんでいたのである。



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カクヨムで「まずシナリオを書いてから小説に変換すると……」という小説の書き方マニュアルを読んで、あまりにも感心したので実践してみました。の記録 apop @apop

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