Chapter 3 シナリオのお披露目

3-1 シナリオ掲載(2-3話 法力油の謎を追え)

 以下に、シナリオ作法の練習として実践してみたシナリオを貼り付けます。


 『異世界仙人の見る夢は』

  第2章 八百年後の世界で

  2-3話 法力油の謎を追え


上記の小説を書くために下書きとして作成したシナリオです。

初めて書いたシナリオであるため、変なところも沢山ありますが、笑って許してくださいね。

そして! 本当は原稿用紙アプリでちゃんと縦書きに書いてあるのです。

ここに貼るためには、しょうがないので横書きテキストにしてあります。

それでは、どうそ!

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【異世界仙人の見る夢は 2-3話 シナリオ】



◯首都ハトナガンドの港・波止場(昼)


   波止場を大小の船が行き交っている。

   ロオウは考え事をしている風で黙ったままゆっくりと木馬を進めている。

   リュシアンも何も言わず、静かに付き従っている。


ロオウ「リュシアン、私はあの船に乗らねばならぬ」

リュシ「あの船……先ほどの大きな動力船でしょうか?」

ロオウ「そうだ。法力油、で動くというあの船だ」


   リュシアンは木馬を前に進め、ロオウに近づき少し首を傾げる。


リュシ「先ほどの大きな船は軍船ですから、すぐに乗り込むことは難しいと思われます。

でも、この湾内をめぐる遊覧の社交船の中に、最新式の法術式動力を持つものが周航していたはずでございます。少し小型にはなりますが……」


   湾を見渡すロオウ。

   湾の向こうに煌びやかな塔を持つ城が少し霞んで見えている。


ロオウ「ふむ。それで良い。今から乗れるか?」

リュシ「船出の時刻を確かめて参ります。少しお待ちくださいませ」


   リュシアンは波止場に立つ白い二階建ての建物の方へ駆けていく。

   それをを見送るロオウ。目を湾内に向けて何かを考え込んでいる。


ロオウのN『法力は気力だ。生きる者からのみ発動する。植物や一部の特殊な鉱物に法力を込めて変化させることは出来る。しかし法力を物質に込めて、それを動力にすることなど理論的には不可能なはずなのだ……』


   木馬で駆け戻ってくるリュシアン。


リュシ「お師匠様、ちょうど良い船がございました。ご案内いたします」

ロオウ「そうか、その商家が船宿か?」

リュシ「はい。就航事務所というようです。観光案内からチケットの予約まで、船に関することは皆、請け負っているようでございます」





◯就航事務所の一階


   カウンターから壮年の事務員が駆けつけてくる。

   リュシアンの馬の口輪をとりながら、見上げて声をかけてくる事務員。


事務員「旦那様方、待合に貴賓室がございますのでご案内申し上げます。どうぞこちらへ」

リュシ「馬を預かって貰いたい。湾を一周りして、またこちらへ戻ってくるつもりだ」

事務員「湾内の遊覧でございましたら、夕刻前には戻れましょう。ご乗馬は私共の厩舎でお預かりいたします」





◯貴賓室


   身なりの良い家族や老夫婦の二人連れなど、既に幾人かが遊覧船を待っている。

   貴賓室付の執事に案内されてロオウとリュシアンが貴賓室に入ってくる


執 事「旦那様、どうぞこちらで今しばしお待ちくださいませ。乗船準備が調いましたらお迎えに上がります」


   ロオウをマントルピースの前の湾を見渡せる大きな窓に面した席に案内する執事。

   席に着いたロオウに従僕が飲み物の盆を持って近づく


ロオウ「ふむ、では軽いシャンパンを。リュシアンも取りなさい」

リュシ「お師匠様、私は……では、冷たいレモンエードを」

   

   近くの席に着いていた老夫婦。老婦人がリュシアンを微笑ましげに見つめている。


老婦人「あらまあ。こちらは可愛らしいお弟子様でいらっしゃいますのね」

老紳士「これお前、不躾に……」

ロオウ「いえ、こちらこそ。奥方殿。お邪魔いたしております」


   ロオウは席に着いたまま、右手のひらを軽く胸につけて会釈をする。

   老紳士も右手のひらを胸に付け、会釈を返す。

   老婦人は両手を胸の前で品よく交差させる貴婦人の会釈を返してくる。


老紳士「私共も先日からこの歴史公園内のホテルに宿泊して、都見物をしているところなのです。今日は天気も良いので、コレにせがまれまして遊覧船でのんびり過ごそうと思いましてね」

老婦人「まあ、貴方。新型の動力船に乗りたいと、あんなおっしゃってらしたのはどなた?」


   老婦人にからかわれ、老紳士が少し眉を寄せる。


ロオウ「おや。私も、船の新型の動力が目当てなのですよ」

老紳士「おお、やはり。そうでしょう! ほらご覧。船は船足の速さにこそ価値があるのだよ」

老婦人「まあ、殿方はしょうがありませんこと。でもお天気も良くて、景色も楽しめますわ、ねえ、小さなお弟子様?」


   老婦人に話しかけられて、リュシアンは恥ずかしそうに相づちをうっている。

   老紳士は大きな窓辺により、湾内を指し示しながら機嫌良く話し始める。


 老紳士「この遊覧船は、こちらの歴史公園を出港して、あの跳ね橋を越えた川向こうの繁華街に少し立ち寄った後、ハトナ湾を横断し、向こうの岬の端に霞んで見える王宮広場前の港で折り返します。そして、沖合いの聖堂の小島を回ってから、こちらの岬を越えた高台にある国立文書館と王立学舎前の波止場に立ち寄り、そしてまたぐるりと岬を巡ってここへ戻ってくるのです」


   老紳士は一気に語り、果実酒を傾ける。


ロオウ「ほう、それは楽しみです。ではこの大きな湾を全て巡るのですね」

老紳士「左様ですとも。この航路を日がくれる前に巡って帰ってくるというのですから、船足の速さは驚くべきものがありますな。私共、老人には昔日の感も無量ですよ」


   ロオウも立ち上がって窓辺により、ハトナ湾を見渡す。


ロオウ「なるほど。それならば、機関部もぜひ見てみたいものです」

老紳士「機関部は、どうでしょう……船員でなければ近づけないと思われますよ。いや、お若い方は何事にも行動力がおありで、実に羨ましいことでございますなあ」






◯遊覧船のラウンジ


   楽師が弦楽器で静かな曲を奏でている

   乗客は、カードゲームを楽しむもの、喫煙室で語り合う紳士もいる。

   ご婦人方はサロンでお茶を楽しみながら湾内 の眺めを楽しんでいる。

   子供達が甲板を走り、歓声をあげているのが聞こえる。

   ロオウはリュシアンを連れて、巧みに社交の輪を抜け出した。


ロオウ「リュシアン、私は今から少し気配を薄くするよ」

リュシ「お師匠様、機関部への経路は確かめてございます」


   リュシアンはさも当然のように答える。

   ロオウはひとつ頷く。


ロオウ「そうか。機関部の法力油が見たい。案内せよ」


   ロオウとリュシアンの気配がすうと薄くなる。

   甲板ですぐ近くをすれ違っても、誰も気づかない。


リュシアン「お師匠様、こちらの階段から階下へ降りられます」

ロオウ「リュシアン、もう少し気配を薄めよ」

リュシアン「はい、かしこまりました……では、こちらでございます」


   リュシアンが、階下へ通じるバックヤードの扉を開けてロオウを通す。

   男の子がひとり、それをを見ている。


男の子「乳母や! 今の見た? あの人達、すうっと消えたよ! あのドアの前!」

乳 母「坊っちゃま……そんな。乳母やには、何にも見えておりませんわよ」

男の子「ほんとだよう! お兄さんと弟かなあ。ふたりならんで、すうっと……」

乳 母「嫌でございますよ。おやめくださいまし。なんだか寒くなって参りましたわ。さ、ラウンジでお菓子をいただきましょう」


   男の子は乳母に手を引かれ、振り返りながら去っていく。





◯船底の機関部


   機関士が三名ほど動力部を操業している。

   操舵室から管を伝って指示を受け、術式の刻まれた動力部のハンドルを回して調節する

   それをすぐ近くで見るロオウ。誰も気がつかない。


ロオウのN『ふむ。術式は一般的なものだ。法力の消費が効率良く回るよう改良がなされているくらいだな』


   リュシアンがロオウに近づき、機関部の内燃部のある方を指し示す。

   ロオウとリュシアンは機関部に近づく。


機関長「おい! 何だか、法力がちっと活性し過ぎちゃいないか?」

機関士「そんなあ! 機関長、こっちでバルブ回してませんよ!」

機関長「そりゃそうなんだが……急に術式の回路に熱が回ってなあ! 変だな、全くよう」


   顔を見合わせるロオウとリュシアン。

   ロオウが頷いて、自分とリュシアンに術式をかける。


機関長「ありゃ……収まったか? ううん? この陽気のせいかなあ?」

機関士「俺の整備がいいんすよ! 機関長。燃費がいいのは油回しといたせいかもですよ!」

機関長「まあいいが、ちょっと不安定だ。ここ、よく見とけ!」


   ロオウは内燃部に続く貯蔵タンクを点検している機関士の手元を覗き込む。

   機関士は何も気づかない。

   ロオウは機関士の操作するメーターを見て、さらにタンクを見る。


ロオウのN『ふむ。これでどうやら例の法力油を貯蔵しているようだな』


   ロオウは気配を薄めたまま、法力を集約していく。

   やがて、気を纏った右手のひらを貯蔵タンクに押し当た。

   ロオウは術式の展開を始める。

   そして、そのまま、ずいとその右手をタンクの中に沈みこませた。

   タンクからは何も漏れたりはしない。

   誰も気づかない。


   ロオウの右手再びタンクの外に出た。

   その時、その手には淡く光を放つ薄青いとろりした液体の入った

   小さな小瓶が握られていたのだった。

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