めくり温泉【田丸流発想法実践その2】

笹又

購入

温泉の素がなくなったので買いに行くことにした。

 そうしたら、店に『湯めくり』という温泉の素が売っていた。私は、それに少し興味をもった。説明を読むに、この温泉の素は名の通り、めくれるらしい。そして、めくるたびに色と効能が変わるという不思議アイテムらしい。こんなものを普通の温泉の素と同じ値段で販売して、いいものだろうか……。と思いつつも、私は買うことにした。


 夜。風呂に入った私は、早速『湯めくり』を入れてみた。

 最初は風呂に湯は紫色に染まっていった。ラベンダーだろうか。とてもいい香り。

 よく見ると、風呂に隅に、まるで紙の折り目のような膜があった。それをつまんで引っ張ってみると、なんと膜の中から黄色の湯が姿を現した。その瞬間、柚とラベンダーが混ざったような香りがした。手に持っていたはずの膜はいつの間にか消えていた。

 とりあえず、入ってみることにした。半分ラベンダーで半分が柚という不思議な湯に。

 しばらくこの湯を堪能した後、まためくってみることにした。入ったままでもめくれるようだが、自分の身体が邪魔をして、半分しかめくれない。仕方ないので、反対側からめくった。

 そうして、また違う香りになった。私は、一つ一つの香りを存分に満喫しながら、温泉をめくり続けた。こんなものがあるのなら、普通の温泉の素なんかいらないじゃん。そう思えた。

 そのうちに、膜がなくなってしまった。

「あれ? めくれなくなった」

 いぶかしんで、私は温泉の素の説明を見た。そこには――。


 


……本かよ!

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