今朝
朝。
息子の泣き声を目覚ましに体を起こす。重たいまぶたをこすり、大きくあくびをし、布団の上で猫背になりながら、ふと誰もいない隣を見つめる。
いつもと変わりない朝のはずなのにあんな夢を見たせいか物悲しく感じる。
「貴方は今どうしているのだろうか。」
ふとそんなことを思いながら生まれたての息子に乳をやり再び寝かしつけた。
貴方と体を交わしたあの夜。それが私の最初で最後の夜。そしてあの夜に宿った命。その命を私は一人で繋いでいく。
あの人は私の親友と結ばれたそうだ。
あの人からも親友からも連絡はなかった。同級生の友人から連絡を受けて知ったのだ。
その電話を受けた日のことは忘れない。
貴方を憎み親友を憎んだ。そして。
自分を憎んだ。
深く深く、深く憎んだ。あの夜、私は溺れるほどの涙を流し、えずいた。枕に顔をうずめ何度も何度も畜生と叫んだ。この世の全てを恨んだ。
だが、その後あの人に何かをしたかというとそんなことは無かった。
なぜなら。
今の私にはこの子がいるからだ。
貴方にそっくりなこの子が。
とてもとても貴方にそっくりな
この子が。
...
またあの子の鳴き声が聞こえてきた。
私は笑顔であの子の元へ駆け寄る。
この子の成長がとてもとても、とても楽しみだ。
貴方の手は羽のように柔らかでした。 飴ん子。 @amenco
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。貴方の手は羽のように柔らかでした。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます