ダンジョン都市で弱小ダンジョンの相談役やってるんですが、誰にも知られたくありません

@hamachan

プロローグ

第1話

 カツン、カツンと僕の靴底に嵌め込んだ鉄が、洞窟内の地面の硬い土と反響している。何十、何百と足を運んでいるが、未だに慣れない緊張感がある。

 警戒しながら足を進めていると、草花が咲いていた。しかもプランターに。これは、先人たちがプランターを置いたと言われていて、洞窟内の魔素から生まれているらしい。


「これで……41、42、43、44、45本かぁ。え~っと、あと5本いるのか。よぉし、ラストスパートだ!」


 プランター生えてあった『薬草』を引っこ抜き、束ねてマジックバックへ丁寧に気合いを入れると、クエストである『薬草50本収集』の為に、また薬草を探しに入る。

 今の僕は、ギルド内でもG、F、E、D、C、B、A、Sランクの内、下から数えた方が速いと言われるFランクで、職業は剣士だ。そして、悲しくなるのが僕の幼馴染みであるフィオンはなんとAランクで、もうじきSランクに届くのだという。

 ……どこで、こんな差ができたのだろうか、なんて。フィオンが頑張っていたのはこの街中の誰もが知っている。いや、知らざるを得ない。フィオンは、物心付く以前から鍛えられていて、今では朝早く街中を疾走しているのだから。

 僕はそんな頑張り屋な彼女が好きだった。しかし、今では彼女は街一番の人気者。フィオンはソロではあるが、パーティ申請が後を絶たないほどだ。

 しかし、僕は今、こうやって初心者でも攻略できるような寂れたダンジョンで薬草集めなんてしている。僕なんかが好きになっていい相手ではない。そう、分かってはいるが、どうしても諦められない。だったら当たって砕けろだ。

 振られてしまえば、未練は無くなってしまうに違いない。お前なんか嫌いだくらい言ってもらえれば諦められる。

 僕は彼女を、クエストに入る前にオシャレな喫茶店に誘っていた。そこで、全てが終わる。

 ツー、と頬に水が滴る。やはり、悔しいのか涙が……


「って、これ涙じゃない、 雨? って、なんで天井から雨漏りしてるんだっ!? どこか、隠れることができる場所__っ!?」


 ダンジョン内で、何故か雨が降りだすという珍事に見舞われたので、隠れる場所を探すために駆けると、なんとゲートがあった。

 何十、何百と足繁く通ったこのダンジョンで初めてみる物で、このダンジョンを知り尽くしたと思っていた僕はかなりショックだった。というか、このフロア自体初めて見たのに、今更気付いた。


「ゲートって普通、地上にあるものじゃないのか……?」


 ダンジョンにゲート。そんな話聞いたことがない。ギルドに報告しなければいけない。しかし、誰かのスキルでしたなんて事であれば、ギルドの笑い者だ。それ以前にこんな凄いスキルを持っている人が、冒険者をやっているとは思えないのだけど。


「……確かめないと」


 ごくっ、と唾を飲み、そのグニャグニャとなって揺れているゲートに手を近付ける。すると、とてつもない力で引き寄せられ、通過してしまった。


「うわああああああああああっ!?」


『侵入者アリ。侵入者アリ。キルド番号14753号、リオン。虹彩認証、一致。侵入者名ハ、リオ。侵入者ト見ナシ、牢獄ヘ連行。3、2、1』


 そこで、意識がなくなってしまった。

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