本作は五頭のゴリラが天才魔術師ゴーリラーに隠されたバナナを取り返すために力を合わせ洞窟を探索する、友情とバナナを巡る物語だ。某名作RPGを彷彿とさせるタイトルだが、特に関連はない。
登場人物が全員ゴリラだからこそ成立する頭の悪い会話、恐ろしい罠という名のバカバカしすぎるトラップ、何度も繰り返される天丼染みた地の文、設定の合間合間にどこか感じられる投げやりさ……と、一つ間違えればくだらないだけの作品になりそうなのだが、本作は独特のテンポの良さでこれら全ての要素を絶妙なギャグとすることに成功している。なんというか絶妙なコントを見ているような気持ちにさせてくれるのだ。
文字数も約3000字と短くすぐに読み終えられる。この分量で登場人物が全員ゴリラなので当然深いテーマとか震えるような感動などはない。サラっと読んで楽しく笑って、はい、おしまい。といった感じの作品だ。でも、こういう作品があるのがWEB小説の良いところだと思うんですよ。全部が全部こんな作品ばかりじゃ困るけれど、こういう馬鹿馬鹿しい作品がいつもどこかに転がっていてほしい。そんな気持ちにさせてくれる愉快な一作である。
(「溢れる野生! ゴリラ小説特集!!」4選/文=柿崎 憲)