第2話 新堂、部活悩んでるってよ


 竜鳴高校。

 部活動が軒並み全国クラスを誇っており、他校から付けられた渾名がモンスターハウス。

 引き抜きは多くないが志望する生徒が殆どでその分、各部活の競争率も激しいことで有名である。

 勉強が疎かになっている生徒も少なからず存在するが、全体的な水準は高く正にモンスターハウス。

 毎年プロが生まれたりテレビで紹介される(ワイドショー含む)お騒がせ高校でもあるため、知名度は圧倒的だ。

 しかし壁に当る生徒も多く、思春期なことも相まって問題が起きることもあるため、正にモンスターハウス。


 

「部活の勧誘、本当にすげえよな……」



 モンスターハウスの門を潜れば在校生が部活の勧誘に精を出しているのも風物詩である。

 単純に人数が増えることは嬉しいことでありモチベーションの向上にも繋がる。それに部費も上がる。

 部活動に籍を置く生徒にとっては今後の活動を決定付けする一大イベントなため、若干引くぐらいの盛り上がりだ。



「そこの少年! 

 どうだ俺達を一緒にぶつかり合うあの快感を追い求めないか!!」


「いや俺はいいですよ……マッスル先輩」



 バナナを持ちながらガチムチな男が歩く新入生に声を掛けるも簡単にあしらわれてしまう。

 マッスル先輩こと剛力彩羽(ごうりきさいは)は身長190cmを誇る巨漢である。ゴリラのような男だが彼女はいる。

 バナナで部活勧誘を行っていることから察せるが、頭は残念ながら野生児レベルの知能指数だ。



「俺を知っているのか少年……って新堂か。

 すまないな、お前にスポーツで声を掛けちまって」


「別に俺は気にしてないっすからね! しおらしいマッスル先輩は全然マッスルじゃないっすよ!」



 ゴリラが肩を落としているのは端から見ると面白い。なんてことを口走らないように気を付ける新堂は笑いを堪えている。

 彼らは同じ中学出身であり顔馴染みである。それに、二人共スポーツ優秀なこともあって親交もあった。

 それ故にマッスル先輩は後輩である新堂が事故にあってしまい選手生命を絶たれたことも知っていたのだ。

 新堂は気にするなと笑顔でその場を去るも、しばらくはラグビー部に悲しみのゴリラがいると新入生の中で話題になるのは先の話である。



「部活ねえ。流石にスポーツは無理だしどうっすかなあ……天体観測とか?」



 余談ではあるが彼は天体観測に興味など欠片もなく、たまたま口走っただけである。

 逆に言えば適当になる程、部活動に興味を示していないことにもなる。

 竜鳴高校の校則には『生徒は部活動加入必須』の条件があるため、何としてでも入る部活を決めなければならない。



「スポーツが駄目ってこんなにも辛いんだなあ……って、解ってたか」


「翔太ー! 部活は決まったのー!!」



 背後から聞こえた元気の良い声に新堂は正体を知りながらも仕方がなく振り向いた。

 幼馴染の活発娘が声を掛けてきた。まあ、それだけだ、と溜息をつく。

 さて、新堂少年の視点に戻し、彼と吹奏楽の出会いをこれから紡いでみましょうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

青春のはながたっ! 十勝崎一馬 @dddnz

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ