●04
「ーー初めまして、アルマのいとこのサナです! えーっと専門は魔法なので……皆に魔法を教えていけたらなーって思います! これからよろしくお願いします!」
ギルが去り、先程よりも騒がしくなった広場にやって来たマの隣にいる少女サナーーは腰まで延びる長い金髪を耳にかけてペコリと子供たちに礼儀正しくお辞儀をした。
「まず始めに魔法の基礎から! 魔法は生まれつき使える人もいれば練習して使える人もいるんだけど……誰かやってみたい人!」
挨拶を終えて、すぐに本題へと移るサナの前には、はい! はい! と子供たちが一斉に手をあげ始める。そのなかにはもちろんキリト、シェロ、シェリ、レイの姿もある。
「えーっと……じゃあ貴女! お名前は?」
「シェロ! シェロ・リリアーネ!」
「シェロちゃん……可愛い名前ね。じゃあまず炎を出す呪文をやってみようか!」
たくさんの子供たちの中から選ばれたシェロはサナに連れられて皆の前に立った。
今から魔法を使うからなのか、シェロは喜びを隠せない。
「!!」
ーーパチンッとサナが指を鳴らすと炎が現れ、サナの足元に咲いている草にかかった。
赤い炎はメラメラと燃え、草も茶色く焼き焦げている。
「すごぉーい!! 私もこれやりたい!!」
初めて魔法を目の前にして興奮し、ピョンピョン跳ねるシェロを前にサナは優しく微笑んだ。
「それじゃあ、よーく頭で炎をイメージして、指を鳴らしてごらん。細かいところまでよーくイメージしてね」
「うん!!」
サナに言われるがまま、シェロは頭に炎をイメージする。
赤く、大きく燃える炎を。
「!!!!!!」
ーーボワッ。
先程の炎より大きく、少し離れた先でも熱く感じる炎がシェロの回りに広がる。
あまりの熱さに触れなくても火傷しそうだ。
「シェロちゃん!」
サナが大きく叫び、再び指を鳴らした。
指の先から大量の水が出てきて、その大きな炎に降り注ぐ。
「大丈夫!?」
大量の水で炎を消し去ると、サナは一目散に炎に一番近かったシェロの元に駆け寄った。
幸いシェロは奇跡的にも無傷で、他の子供たちもアルマも怪我はないようだ。
「……私……魔法……」
「凄いよ!! シェロちゃん!」
ペタッと濡れた地面に座り込んだシェロの肩をサナは大きく掴んで揺さぶった。
「私だって始めはあんな大きいの出なかったよ……? シェロちゃん、魔法使いの素質……あるんじゃない?」
そう言ったサナの輝く瞳よりも大きな瞳をシェロはキラキラと輝かせる。
「素質……私……なれるの?」
「なれるよ! 初めであんなにできたんだもん!」
ーー私、なれるのかな。
ーー夢だった、魔法使いにーー。
幼き勇者の行進曲~落書きだらけの世界地図~ 夏目 織 @NatumeOri
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