シンデレラという話は(血と)矛盾に満ちた話で、矛盾というのは、時限式の魔法ってなんなんだよそもそも、なんの意図がある行為なんだそれは、ということであったり、「靴のサイズ」という指標が指紋なみに個人同定をなしえるのか、ということであったり、ていうか時限が訪れたのにも関わらず靴だけが残ったのは何故か、ということであったりで、しかしこれらの事柄について血相を変えてひとを問い詰めたところで、「まあまあ、それはお話ですからねえ」と言われ、咎無き善良なひとたちは、もっと善良なひとたちに虐げられ、悲しみにうなだれながら日々を過ごすことになる。
この(ほどほどに)善良なひとたちを救うべく、シンデレラを正しく解釈しようとする試みはこの世にいくつか存在する。
この物語もその一つであり、上記の矛盾点をそれなりに解消したうえで、明後日の方向にスープレックスまで決めており、大変面白い。他の童話にも取り組み、無辜の民を救ってくれることを、静かに期待したいと思う。