第19話
一学期の終業式。
四人の勇者が、六人の魔族と仲良くはしゃぎながら、姿を現した。
「きみたち、仲直りしたの?」
「ああ、そうだよ」
安部がいった。
六人の魔族はかしこまっているようだった。魔宮が事情を話した。
「それがさ、魔王様を倒したこの四人は、力尽きた魔王様に対してこういったのさ」
なんだろう。何をいったんだろう。
安部は照れている。
「魔王、ぼくらと手を結べば、世界の半分をくれてやろう」
おれは、きょとんとした。そんなことをいったんだ。それじゃあ、異世界の戦いは終わったのか。平和が戻ったんだ。人類と魔族が手を結ぶ結末がやってきたんだ。この世界と異世界の交流が始まり、四人の勇者は貿易を始めるんだ。四人の勇者は、副業で商人をやるんだ。
よかった。本当によかった。
おれたちは仲間だ。同じ学級の仲間じゃないか。
シュヤクナンジャイが五人の宇宙人と一緒に学校にやってきた。
いちろうがいった。
「地球侵略の総司令官シンリャクザーを倒してきたよ」
おれはどっと安心した。宇宙戦争も幕を閉じたらしい。
「シンリャクザーは、地球と宇宙が交流する未来を約束した。地球の自立を守りながら、保護貿易をする条約を締結してきた。これで、地球の文明はぐんぐん成長するだろう」
おれはいちろうと握手した。
「脇田、きみのことばがなければ、こんな平和的解決はありえなかった。ありがとう」
五人の地球人と五人の宇宙人が順番におれと握手をしていった。
平和が訪れた。
おれは脇役ながらも、微力ながら、世界の平和に貢献することができたのだ。
よかった。本当に良かった。
五人の魔女っ娘と、五人の天才科学者が、仲良く腕を組みながら登校してきた。
いちゃいちゃしている。
「どうしちゃったの、きみたち?」
おれが聞くと、リリナが答えた。
「わたしたちと付き合うのにふさわしい相手といったら、この五人しかいないじゃないの」
リリナが少し照れている。
「わはははははっ、科学に魂を売った我々も、少女の純真な心に負けたのじゃ」
湯川がいった。
五人の魔女っ娘と、五人の天才科学者はそれぞれ正式に交際することにしたらしい。
いきなり、五組のカップルの誕生である。これはめでたい。
「ははははっ、ははははっ」
おれも笑った。思わず笑みがもれた。
こうして、おれたち三十一人の高校生は、みんな無事に一学期の終業式を迎えたのである。
もうすぐ、楽しい夏休みが始まる。
脇役はそっとクラスの隅で、一人ぼっちの夏休みが始まるのを待った。
これでいいのだ。こんなに嬉しいことはない。
夏の教室にさわやかな風が吹いた。
脇役は簡単に殺される 木島別弥(旧:へげぞぞ) @tuorua9876
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