親子だから理解しあえるわけではなく、親子だからこそ複雑で、もやりとしてしまう。反発や思慕がないまぜになった娘の内面が淡々とした文章で綴られています。
娘どころか、孫までいる身です。現実の父娘の関係は一本道ではなく、歪みこんがらがって霧の中を通り、それでも繋がっているというようなものかと思います。この短編は、そんな雰囲気を鮮やかに描いておられると思います。文学的な表現の持つゆらぎ、奇妙な味が心地よい、そんな作品です!素晴らしい!
父娘なのに、少しドキドキして読みました。
書き出しから素晴らしい。父と娘という、近いはずなのに遠い距離が絶妙な筆致で描かれている。美しく謎めいた女と、母の握ったおにぎり。決してあからさまではない、それでいて妙に胸に引っかかる演出が巧み。とても好きな作品でした。
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